第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
倒れるときは前のめりでお願いします
[8/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
れ以上クレーム気味な言い訳をできる状況にないと把握できた。
「仕方ないわ。行きましょうか」
「は、はい……」
確かに祝辞はもうまともに聞いていなかったんですけど、それは祝辞だけのつもりだったんですよ。在校生代表からの言葉とかは聞いておくつもりだったんですよぅ……。
そんな用意していた言い訳をすべて心中で吐き出して消化しながら、珠希はまだ意識の戻らない男子生徒に制服の上着の背中部分を捕まれたまま左肩を貸すという奇妙な体勢で、養護教諭の女性と一緒に男子生徒を担いで講堂から「ご退場」となってしまった。
☆ ☆ ☆
「……うん。どこをどう見ても貧血ね」
「あ、やっぱりですか」
白衣を着た養護教諭の一言に、珠希は落胆気味に返した。
「にしても、アナタも災難ねぇ」
「いえ。別に」
ベッドで横になっている男子生徒を珠希の視線から隠すようにカーテンを引き、養護教諭は同情の眼差しを珠希に向けながら自分が普段使っている椅子に腰かける。
高校生活初日どころかまだ入学式も終わっていないというのに、なぜ珠希が見ず知らずの同級生の付き添いでこうして保健室にまで赴かなきゃいけなくなったのか。
その理由は貧血でブッ倒れてきた男子生徒が過呼吸まで起こしてしまい、その手が珠希の制服のブレザーを掴んで離さなかったことにある。
「でもアナタ――そういえば、名前聞いてなかったわね」
「竜門珠希です」
「竜門さん、か。珍しい苗字ね」
「よく言われます」
「一度聞いたら忘れられないわね」
ネット上の苗字検索サイトによれば、どうやら竜門姓は近江、大和にそのルーツがあるらしいが、珠希の三代前まで遡っても先祖はバリバリ関東圏住まいだった。この事実はいかがなものだろうか。
しかも苗字の発音のせいなのか、使われている文字のせいなのか、初対面の人からはどこか由緒のある家系の出なのかと身構えられてしまうことが多い。その実、珠希の家庭は由緒もへったくれもない両親共働きの一般家庭である。ただ少しばかり周辺の一軒家よりも敷地も家屋面積も大きいだけだ。
ただひとつ、珍しいといえるのはその家族構成。両親が見事なまでのアダルト産業側のクリエイターであり、その子供たちも声優マニア、野球バカ、(コスプ)レイヤーと多岐に渡る『普通じゃない』曲者揃いな点だ。何より珠希自身が最も世間的に名の知れたイラストレーター【天河みすず】の正体である点を除けば。
「けど竜門さん。アナタよく過呼吸の対処できたわね」
「運よくうまくいっただけです」
実はとあるergでも主人公が病弱ヒロイン相手にやっていたからだなんて言えない。口が裂けても股が裂けても。……実際、そのゲーム内での数ヶ月後にその
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ