第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
倒れるときは前のめりでお願いします
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引っかかって……」
何やら背中に感じる軽い突っ張った違和感に、珠希は首だけを動かして確認しようとするが、当然ながら歯科には何も捉えられなかった。すると、代わりに珠希の背中を見てくれた白衣の痩身美人は残念そうに呟く。
「あー、これはがっしり掴まれちゃってるわ」
「え? がっしり? 何がですか?」
「この男子生徒の手があなたの制服の背中を掴んじゃってるワケ。しかも、凄い力で、離れない、しっ!」
「え? ええっ!?」
無意識に珠希の制服を握り締めている男子生徒の手を離そうとしてくれているのか、背中のほうから女性教師の声がしたが、男子生徒の握る力のほうが強いらしい。
「…………っあー、これ死後硬直より面倒だわ(ボソッ」
ええ? この状況どうするんですか? と心中でボヤく珠希に対し、女性教師はとんでもない発言を口にしてみせた。少なくとも、意識が戻ってきていない生徒を前に教師が、それも養護教諭が吐いていい台詞ではないのは確かだ。
「ちょ、勝手に殺さないで下さいよ。まだ呼吸ありますよ?」
「いや、けどこの手はなかなか固く握ってるし」
「喩えがブッ飛んでんですけど?」
「けど実際はそうなんだって」
実際は――とか言われても、あたしは死体触ったことないし! 生で「頭を強く打った」人を見たことはあるけど、内臓の臭さとか嗅いだこともあるけど、あれもこれもしばらく流動食でいいくらい食欲が失せる。
鮮烈な赤の中に点々と白が紛れ、そこから覗くのは時折痙攣したように動くピンクの――(以下、本作品のレーティングに関わるので削除)。
するとそこへ、いつの間に来たのか、白が混じった口ひげを蓄えたスーツを着た細身の男性が軽い咳払いをして注意を惹きつけた。
「ゴホンッ。少しよろしいですか?」
「え? あ、はい。何でしょう教頭先生?」
「すみませんが、これ以上時間がかかるようであれば、いっそのこと二人とも、保健室で落ち着いてから対処していただけますかな?」
「え? あ、ああそうですね」
「申し訳ありませんが、まだ入学式の最中なので」
……わ、忘れてたぁぁぁあああぁぁっっっ!!
男子生徒の介抱ですっかり忘れていた珠希だったが、教頭先生と呼ばれたベージュのスーツ姿の男性と養護教諭の女性教師の会話で思い出した。現在地は稜陽高校の講堂、状況は入学式の途中であることを。しかも視界の端に捉えた壇上で祝辞を述べていたお偉い(と思われる)男性は文句こそ言わないにしろ、明らかに時間を持て余しているようだった。
「そこの女子生徒も、申し訳ありませんが」
そこの女子生徒……って、あたしですか? そうなんですかそうですよね。
若干ではあるものの、申し訳なさそうな教頭先生の声色に、珠希としてもこ
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