第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
倒れるときは前のめりでお願いします
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て今、なんであたしのほうに倒れてくんの? という脳内ツッコミが一切なされなかった珠希は、入学式の場にいた全員の視線を一手に浴びていた。
「……す、すみません……」
本当は珠希のほうが謝られてもいいはずのこの状況下、開口一番、珠希のほうから謝罪の文句が出たのはこの小心者少女が日本人だからというべきなのかどうか。
始業式の最中、お偉い人の祝辞を中断させた挙句、倒れてきた初対面の男子生徒を真正面から受け止めたものの、その体勢は周囲に誤解与えまくりのどこからどう見ても男女の抱擁シーンという、とんでもない状況に陥った小心者長女体質の珠希だったが、これでも(主に仕事における)修羅場という(締切や納期を前にしての)修羅場を潜り抜けてきている。
むしろ簡単に精神的に追い詰められるくせに、逆境になればなるほど頭が冴え、ピンチをチャンスにどころか、そこから新たなスキルまでゲットしてしまうような娘である。バスケで喩えるなら逆転3Pをブザービーターで決め、野球なら3点ビハインドで9回裏2アウト満塁のフルカウントからバックスクリーンに特大ホームランを叩き込み、サッカーならまるで2005年のイスタンブールのような出来事を一人でやってのけてしまうくらいに――要は美味しいところを全部掻っ攫っていく英雄体質でもある。
すると、そんな小心者ヒーロー少女の耳が異変を察知した。
「――っ、は。……ぁっ。……っ。っふ……」
耳に届く男子の深い呼吸。その間隔は短く、少しずつ吐き出す力が強くなっている気がする。
あ、これってまさか貧血に加えての過呼吸かな、これは。
途轍もなく注目を浴びているのは肌に突き刺すような視線でわかっている。目立つのは嫌いだっていうのに、妹の愛され体質とは違う意味でなぜか周囲から放っておかれないし、普通に行動しているつもりでもなぜか目立ってしまってきた。
異変に気付いた教師たちも数人、こちらに向かってくるのが視界の端に見えたが、珠希が今、最重要課題に挙げたのは目の前……というかほぼ珠希の胸の中で貧血に過呼吸のコンボを食らっている男子生徒の容体を安定させることだった。
今までの学校で習った授業や、家族の舌を唸らせてきた料理のレシピ、はたまたその下拵え、さらには仕事の上で教わった技術や世間の容赦の無さ、主宰する同人サークルの運営やら著作権やら青少年保護条例の覚えておくべき事項の中身が詰め込まれ、果てには好きなergヒロインの誕生日や3サイズに至るまで――15歳少女の脳内としてどうかと思うものも含まれる膨大な知識の中から、救急知識を引っ張り出した珠希は、過呼吸の応急処置で紙袋を口に当てる方法があることを見つける。
なお、男子生徒の呼吸の異変に気付いてからこ
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