第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
倒れるときは前のめりでお願いします
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メイン原画デビュー(注:けどerg)を果たした当時中学2年生だった少女は国内最大手のコンシューマ向けゲームメーカー【エリュシオンソフトウエア】から新作のキャラデザとイベント原画の依頼を受諾し、若さによる浅慮ゆえの地獄を見つつもちゃんと結果を出した。その結果、『Symphonic Chronicle』こと『シンクロ』は全世界における累計販売本数でトップ10に入る売り上げを叩き出し、その作品のキャラデザと原画という大役を務めきったこの少女の元には新たな仕事の依頼が次々と舞い込んできており、新規の依頼に丁寧なお断りと謝罪のメールを返す回数も増えている。
昨夜も昨夜でこのイラストレーターの少女は主に20代から30代をメイン購読層に絞った中堅出版社から毎月刊行される成人男性向け雑誌の表紙イラストを描き、それとは別の大手出版社の傘下レーベルから発刊される10代に人気のWeb発ノベルの挿絵と表紙も描いていた。その彩色まで済ませたの時点で午前3時を過ぎていたのだが、この絶賛売出し中の原画家はそこで寝るかと思いきや【CalmWind】の新規プロジェクトの概要に目を通し始めた。
「――ということで、これから君たち新入生には……」
未だ続く祝辞を聞く耳を塞ぎつつ、椅子に座った体勢から背筋を伸ばすと腰が悲鳴を上げ、猫背になると即座に睡魔がまとわりついてくる状況下、まともに働こうとしない頭を動かそうとする珠希だったが、結局のところ、強烈な眠気も急な腰痛も自身の身体が出す危険信号を無視して突っ走った自分の自己管理能力の無さが原因である。
しかも世知辛い話、原画家・イラストレーターの界隈ではもうサクセスストーリーの階段を三段飛ばしで頂点付近まで駆け上っていった珠希はもうやる気だけを見せて納得してもらえる立場にない。結果を出せば出すほどハードルは高くなり、首に回された縄は閉まっていく。その対価として得られる報酬は目に見えて増えていて、実力と成果は確かな足跡として残るものの、この流行廃りの移ろい変わりやすい世界、明日はどうなっていることやら――。
とはいえ、これから先の未来、仮に原画家・イラストレーターとして食べられなくなっても、珠希が今まで実際のゲーム制作の現場で経験してきた中身は下手な新卒希望者よりよっぽど即戦力になってくれる。ある意味、潰しは利かないが。
……ん?
そんな中、ふと視界の端に違和感を覚え、珠希は自分のすぐ左隣に振り向くと――。
「……ぅえ?」
左隣に座っていた男子生徒の様子が明らかにおかしかった。
大きく舟を漕ぐように頭が揺れ動いているのだが、表情が睡眠時のそれではなく、何かをこらえているようだった。しかも顔色がどこか悪いように見える。
「……ねえ。ちょっと、大丈夫?」
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