第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
倒れるときは前のめりでお願いします
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――時は遡り、私立稜陽高校始業式。その最中。
「――であるから、ぜひともこれからの未来を背負って立つ君たち新入生には、この輝かしい歴史を――」
新入生の眼前、私立稜陽高校の体育館の壇上で、とってもありがた〜い祝辞を、まだ夏日でもなんでもない4月の頭からあつ〜く語ってくださる、ちょっとばかり頭頂部が厳冬を迎えて側頭部も初雪ならぬ白いモノが混じってしまっている男性。
熱くなるのは松岡○造だけで十分だっつーの、と胸中で毒づく新入生の一人、竜門珠希はあまりの退屈さに意識を飛ばさないよう必死に耐えていた。
「……もこの稜陽高校、かつては――であり、また……」
もうかれこれ10分くらい話しているのではないかとも思ったが、ちらと体育館の壁にかかる時計を見ると、実際にはまだ2分も経っていなかった。時計も見るとさらなる眠気に襲われるため、珠希もしっかり確認したわけではないが。
――にしてもこの男性、祝辞の段取りに移った際に司会進行役の教師の口から何かの会長だと紹介があった気がする。しかし会長というと得てして事なかれ主義の無能か急進主義的に改革を謳うトラブルメーカーか、業績第一主義の黒い空気の中で神格化された辣腕社長が第一線から退いた後に就任する役職というイメージが珠希の脳内に浮かぶ。
ではそれは誰のせいなのかと問われると答えに詰まるが、とある国際的球技の某連盟や父娘の確執があった某家具店などなど――意外と枚挙にいとまがなかったりする。
決してこの世界に存在する「会長」が皆すべてそうあるわけはないのだが、際限なく浮かんでくる自らの言いたいことをまだ年端もいかない若造相手に簡潔かつわかりやすく伝えるという作業は意外と難しい。どんなに学業成績や優秀な経歴で足切りをしたところで、一から十まで話しても一すら理解できない人間が集団には必ず生まれる。それは学力ではなく理解力の差であり、話を聞く側の理解力を補うだけの話術を優れた指導者は持っていたりする。
「……っ、ふぁ……」
周囲に悟られないよう、小さく吐き出した息に紛れ込ませて欠伸をした珠希は視線だけを動かして他の新入生――同級生たち――を見渡す。
稜陽高校の今年度の新入生はおよそ250人。珠希と同じデザインの制服を着た男女が普通科6クラスと理数科2クラスに分けられる中、予想通りに男女混合で苗字を50音順に並べられた珠希は見事に普通科1年C組の最後尾を陣取っていた。
ただし、入学式会場である稜陽高校の講堂の座席数の都合上、なぜか珠希の隣は1年C組の出席番号最後の男子生徒だったりする。もうちょっと考えたら別の対応策あるんじゃね? と心の中で毒づくものの、それを実行するかどうかはTPOに応じてしかるべきなのである。
あー、これは結構ヤバい
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