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黒魔術師松本沙耶香  紅雪篇
20部分:第二十章
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だけれど」
「それでしたら」
 大したことはないと思った。ただ眼鏡を外すだけである。佳澄はそこに断る理由も見せずに応えたのであった。
 眼鏡に自分の両手を添える。外してベッドの横に置く。それだけであるがその動作だけで今褥に素顔の佳澄が姿を現わした。それは何の護りもない無防備な無垢さを露わにした少女の顔であった。
「ふふふ」
 沙耶香はそんな彼女の顔を見て妖艶に笑ってきた。
「いいわ。さっきとはまた違って」
「そうなんですか」
「一つ覚えておくといいわ」
 沙耶香はその眼鏡を外した佳澄に対して言う。
「女はね。簡単に仮面を着けることができるのよ」
「仮面を」
「そうよ。例えば貴女の眼鏡がそうね」
「眼鏡だけで」
「ただ何かを着けているだけでそれは仮面になるのよ。覚えておくといいわ」
「そうなのですか。何か」
「わかってくることになるわ」
 また佳澄に対して述べた。
「少しずつね。けれど今は」
 少女の上に覆い被さってきた。その脚と脚の間に身体を潜り込ませてきた。
「今度で完全になおしてあげるわ」
「完全に」
「そうよ。そして」
 少女のあどけない顔を見下ろしこれまで以上に妖しい笑みを浮かべてきた。それはまるでこの世には咲いてはならない漆黒の花の様に美しかった。異形の美がそこにあった。
「また貴女をね」
 そのまま少女を抱く。昼まで二人きりの世界を楽しんだ。それが終わり沙耶香はそのまま上野の道を進みやがて誰も知らない謎の小路へと入ったのであった。


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