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黒魔術師松本沙耶香  紅雪篇
2部分:第二章
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ら」
 美女は彼女のそんな言葉を聞いてその流れる目をうっすらと細めてきた。
「はい、何か」
 女は彼女の言葉に答える。
「今までにないことでしたし」
「御主人や他の男の人とどちらがよかったかしら」
 美女はさらに問うてきた。
「どちら?」
「貴女です」
 女は声も濡らして言ってきた。
「それもずっと」
「そう」
 彼女はその言葉を聞いて満足したようであった。また笑ってみせてきた。
「それは何よりね。それじゃあ」
「ええ」
「また」
 そう言って女の上に覆い被さってきた。煙草は闇の中の何処かへと消えてしまっていた。
「しましょう。いいわね」
「はい、また」
 覆い被さってくる美女を迎えて女も述べてきた。
「お情けを」
「あげるわ」
 そのまま二人は交わりはじめた。女と女の交わりであるがそれを堪能していた。それが終わってからホテルにその美女と女が出て来た。美女は黒いスーツとズボン、白いシャツに赤いネクタイを締めその上に黒い丈の長いコートを羽織っている。まるで男のような服である。
 女は白いコートに黒いストッキングとブーツだけが見える。他に見えるのは赤いマフラーだけだ。背は美女に比べるとかなり低い。それで男女に見えないこともない。
 美女はホテルの入り口を出ると彼女に声をかけてきた。
「これでお別れね」
「そうですね」
 女は名残惜しそうにそれに答える。
「何かあっという間でした」
「ええ」
 二人の周りにも紅の雪が降り、そして積もっていた。だが彼女達はそれには構わず話をしていた。
「私もよ」
「そうですよね。何か」
「楽しいことは一瞬で過ぎていくもの」
 美女は言う。
「だからこそ素晴らしく、名残惜しいものなのよ」
「ですね」
「だからまた」
 声をかける。
「会いましょう。そして楽しい時を」
「はい、また」
 入り口で見詰め合う。それから徐々に顔を近付けていく。
 唇を重ね合った。美女も女も目を閉じて互いの唇を味わう。それが終わると二人はうっすらと目を開けてお互いを見やる。口を一条の透き通った糸がつないでいたがそれはすぐに消えてしまった。
 美女は女の唇を堪能した後で別れを告げその場を後にした。雪の中を滑るように歩いているとそこに一羽の鳥が舞い降りてきた。それは黒い鳩であった。
「あら」
 美女はその鳥を見て声をあげる。
「お呼びね。どちらからかしら」
「新宿」
 鳥は人の言葉を話した。目が赤く光る。
「新宿ね」
「そう。あの人が呼んでいる」
「わかったわ」
 美女はその言葉に答えた。
「じゃあすぐに行くわ。伝言ね」
「ああ」
 鳩は言う。
「伝えることは伝えた。では」
「ええ、戻って」
 美女は鳩に対して告げる。すると鳩は美女の影の中に飛び込み
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