第一話 “竜翼の風”
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「ギルマス〜?何処っすか〜?」
よく晴れた夏の陽射しの下。
竜翼のギルドホームで、俺を探す声がした。
「全く……。王様直々の呼び出しが掛かってるのに、何してるんだろう……」
「呼んだか、ベル?」
俺は窓枠を掴んで外から空いている窓に入り、その人物ーーーベルベットに声をかける。
「あ、ギルマス!今朝からずっと探してたんすよ〜?」
ベルベットは言いながら駆け寄ると、何もない所で転け、書状を俺の顔面にぶち当てた。
俺は書状を顔から剥がし、眉間にシワを寄せて言う。
「……何で何もねぇ所で毎回転けて紙をぶち込んでるんだ?」
ベルベットはアハハ、と笑うと言う。
「俺も聞きたいくらいっす。何しろ、ファフニール家の長男は、大体何もない所で転けるって言う呪いがあるらしいんですけど」
「んなもん迷信に近いだろ」
俺は呆れて言うと、書状を開き、読む。
「えーっと……。『拝啓、竜翼のギルマス殿。討伐任務を依頼したいので、城まで来るように、敬具。追伸、解るなら寄らなくても良い』か……」
そして俺はその書状を握り潰すと、ベルベットに投げ捨てる。
「ちょ、何してるんすか!?書状を握り潰すなんて!!」
「あの腐れ王様の命令を誰が聞くか。そもそも、うちの方針知ってんだろあのジジイは」
俺はいい放つと、部屋に戻ろうと脚を動かす。しかし、その腕をベルベットが掴んでいた。
「……ライガさん、何処いくんですか?」
「決まってるだろ。くそジジィを殺しにいく」
「駄目ですよ!」
「冗談に決まってるだろ」
俺は肩を竦めて言うと、ベルベットはほっとした表情を見せる。俺はそれを見ると、付いてこいと言い、部屋に戻る通路を歩く。
「で、本当はどちらに?」
「最近、ここらでヴィルコラスが出現してるのは知ってるよな?」
部屋に戻る傍ら、付いてくるベルベットに問う。ベルベットは頷き、言う。
「確か、錬成の国『グルワライズ』北東から出現したモンスターっすよね?」
「よく覚えているな。流石、“竜翼”のメンバーだ」
錬成の国『グルワライズ』は、国のほとんどが歯車の動力で生活を成り立たせている。何でも、神が歯車を半永久機関として再錬成したのが始まりらしい。そのせいか、グルワライズ周辺には、金属を好物とするヴィルコラスを始めとする鋼鉄族は、一部人間と共存はしているけれど、半数は意思を持たない怪物。その姿は多種多様なれど、脅威性には一貫して高い。
そのヴィルコラスが自らのテリトリーを離れて別のテリトリーに移るのは余りないと言える種族でもある。
「ヴィルコラスが出現した、と言う報告は今まで無い。だとすれば、グルワライズから現れ出でた、とした方が理解が早い。それに、ヴィルコラスは鉱物を好物とするからな、うちの国に少ない鉱石資源だ、狩るのは当たり前だろ」
「ああ、確かに」
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