解放
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。
早く治さないと、本当にヤバい。
「黙ってろ!」
両手をクロスツェルに翳して、意識を集中する。
ここまで酷い怪我は治した経験が無い。
完全に治せるかどうか、自信も無いし、分からない。
でも、ここでやらなきゃ、クロスツェルが死ぬ。
「……死んでる? 神父が?」
とにかくやるしかないと思った、その時。
私の背後から、不思議そうな男の声がした。
「そこに居るだろう」
横に立って屈んだ男が、私の肩を馴れ馴れしく抱きながら指を立てる。
その指先が示したのは、仰向けに倒れているクロスツェルの体。
「これは、クロスツェルの体だ。中身はベゼドラで」
「ベゼドラの精神体と器の間に、神父の魂が形を残しているんだが」
………………え?
って、ちょっと待て。
どうしてお前まで驚いてるんだ、ベゼドラ。
「ベゼドラと器の間って、どういう意味だよ? クロスツェルはベゼドラに魂を喰われて消滅したって話じゃ……」
頬がくっ付きそうな距離の男に目を向ける。
関わるなと頭の片隅で警告が聴こえるが、今はそれどころじゃない。
「……なるほど。言動が繋がらない理由は、自覚が無いせいか」
男が何かに気付いたのか、クスクスと笑いだした。
「ベゼドラよ。貴様、アリアにはこう言っていたようだな。愛してると叫ぶクロスツェルの声がする。だからアリアを殺せないと。それは半分正しく、半分は誤りだ」
「……な、……に……?」
「アリア……いや、ロザリアか。彼女を愛しているのは神父だけではない。貴様自身もだ」
………………は?
「……ふ……ざ けた、こと を……!」
「貴様は神父を通してロザリアを見ていた。アリアだと気付いていながら、『アリア』とはまるで違う『ロザリア』を。暗い地の底から見上げた光は、さぞかし眩しいものだったろう? 貴様が神父を喰い切れてなかったのは、本当に消滅させれば『ロザリア』が教会から消えると理解していたからだ。ためらった挙げ句に器を共有し、感情に共鳴して、余計に思慕を募らせた。神父にせっせと刷り込んだ声は、『ロザリア』に対する貴様自身の欲求だ。体を重ねて悦楽と歓喜を得ていたのも貴様自身。愛を知った悪魔は滅びるというが……いや、貴様が神父に責任を押し付けて苦悶する様は、なかなかの見物だぞ。貴様の中で『アリア』と『ロザリア』は既に別個だというのに」
「……レ ゾ、ネクト……貴、様……っ がはッ」
「……! もういいから、黙ってろベゼドラ! 治すのが先だ!」
さっきよりも、吐いた血の量が多い。
話に気を取られてる場合じゃなかった。
薄い緑色の淡い光を放って……
ああ、やっぱり、あっさりとは治せないのか。
血が消える早さも
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