10部分:第十章
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えたのは私だったわね」
「ええ。あの時のことも覚えているわ」
佐智子は言う。
「強引に言葉で誘ってね」
「私は無理矢理奪ってはいないわよ」
ネクタイを締め終え漆黒のコートを着てから述べてきた。
「あくまで普通に。声をかけただけよ」
「声をかけただけ」
「そう、それだけ」
彼女は佐智子を見ながら語る。語りながらもその顔は満ち足りたものであった。
「それだけなのよ」
「つまり罠にかかる方が悪いということなのかしら」
佐智子は起き上がってきた。横目で沙耶香を見ながら言うのであった。
「その言葉だと」
「罪を犯すことこそが快楽なのよ」
佐智子の問いに対してこううそぶいてきた。
「人は罪を犯すものなのだし」
「悪だからいいのね」
「いつも言っているようにね」
そう述べる。
「そういうことなのよ」
「相変わらずね。そこは」
佐智子の整った顔に苦笑いが浮かんだ。その苦笑いのまま呟く。
「いつも」
「さて」
コートを着終えたところでまた言ってきた。
「ではまた。会いましょう」
「何処へ行くの?」
「空も暗くなってきたしね」
見ればもう夜になっていた。部屋の灯りに照らされる雪は相も変わらず紅の色のまま魔都に降り続けているのであった。
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