7部分:第七章
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住人であった。マクベスは森の住人達の言葉に誘われ王となり、そして森が動いた時に滅んだ。全ては森の言葉通りに。
「私はあの魔女の血を受けた者」
「血を」
「正確に言うならば。その教えを受け継いだというべきかしら」
両手から放つ何かで霧の腕を消しながら言葉を続ける。
「貴方とはまた違った世界なのよ。森の世界はね」
「じゃあ霧に勝てるとでもいうの?」
霧はそれを聞いておかしそうに尋ねてきた。
「森は水を吸うもの」
それに対する彼女の返答はこうであった。
「だったら霧を怖いと思うこともないわね」
「大した自信だね」
霧はそれを聞いても怖れるところはなかった。相変わらず余裕が感じられる声であった。
「けれどね」
そして霧はまた言った。
「僕はこれだけじゃないんだ。腕だけじゃね」
「他にもあるのかしら」
「うん」
霧はそれに頷いた。
「お姉さんが森なら。これはどうかな」
そして周りの色を変えてきた。
「これは」
霧が淡い赤色に変わっていく。それはまるで血を混ぜたかのような赤であった。毒々しい不気味な色であった。
「血!?」
「似ているけれどそうじゃないよ」
霧は嘲笑に近い笑みを込めてこう言った。
「これは毒だよ」
「毒」
「僕はね、毒も操ることができるんだ。かってそれで死んだ人達を霧の中に包んできたから」
「そうだったの」
影の世界に潜む者ならではの技であった。
「これで今まで。多くの人達を天国に連れていってあげたよ」
霧は楽しそうに言う。
「色々な人をね。そして今お姉さんも」
「さっきも言ったけれど」
沙耶香はそれに対して言う。
「私は天国に行くことはできないのよ。貴方が言う天国にはね」
「じゃあ地獄かな」
「地獄でもないわ。強いて言うなら」
言いながら動きを止める。そしてその両腕に何かを宿らせる。
「森の中よ。神々が棲む森の中へ」
どうやらそれが彼女の言う神々であるらしい。森の中に潜む。それはおそらく只の森ではない。
人の心の中の森。キリストにより否定された神々。彼等が棲む森なのだ。
「そしてそこへ行くのは私の意志によって。貴方の意志じゃないわ」
「じゃあどうするの?この毒を」
「毒、これが」
急に笑ってうそぶいた。
「てっきり絵の具かと思ったわ。面白い趣向ね」
「そんなことを言っていられるのも今のうちだと思うけれど」
「生憎毒とかそうしたものには強くて」
両腕に何かが宿った。それは先程から投げていたものであった。
「そうそう簡単にはやられないのよ。残念だったわね」
「それじゃあこちらも別の方法があるよ」
霧はそれを聞いても平然としたものであった。
「これでね。どうかな」
今度は霧の中から人が出て来た。いや、それは人では
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