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黒魔術師松本沙耶香 妖霧篇
7部分:第七章
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端とされた術を復活させたもの」
 語るその目が赤く光りはじめた。
「その中にはケルトの秘術も入っている。これもまた当然でしょう」
「そうだね」
「では私がこれから何をするのかはわかるわね」
「うん」
「さあ来なさい。貴方を冥府へ送り届けてあげるわ」
「冥府か」
 霧はそれを聞いてもまだ笑っていた。
「生憎僕はそっちには行ったことがないんだ。そしてこれからも行くつもりはない」
「貴方にそのつもりがなくても私が送り届けてあげるわ」
「できるの?お姉さんに」
「そうでなければここには来ないわ。薔薇の香りを漂わせてね」
「そう」
「で、どうするのかしら」
 沙耶香は問うた。
「自分で行くのかしら。それとも私が送り届けてあげようかしら」
「そのどちらでもないよ」
 霧は第三の答えを述べた。
「どのみち僕は行くつもりはないからね。だから」
「逆に私に行ってもらいたいと。そういうわけね」
「そうだよ。折角薔薇の香りを漂わせているんだし」
 霧はまだ言う。
「行かせてあげるよ。天国にね」
「生憎だけれど」
 また霧が腕になった。そしてそれが沙耶香に襲い掛かる。沙耶香はそれを見据えながら冷静な口調で言った。
「私は天国に行くことはできないわ。何故なら」
 その赤く光る目はまさにルビーであった。闇夜の中に輝く宝玉であった。それは妖しい光を放っていた。
「私はキリストの僕ではないから。私の信じる神は」
 語りながら動く。まるで影の様に静かで風の様に速い動きであった。
「闇の神々だから。闇の中にあって人々をそれぞれ導く神」
 動きながら何かを放つ。そしてそれで腕を消していく。
「闇の中より生まれた道。それはかってキリストによって否定された道」
「じゃあ僕と同じだ」
「違うわ」
 だが霧の言葉は否定した。
「かってこの欧州の森の中で信じられてきた深い神々。それは森が切られることによってその居場所を失っていった」
 欧州はかっては深い森の中に覆われていた。そこには妖精や魔物が潜むと言われてきた。実際に無法者が逃げ込み野獣が棲んでいた。森は人々にとって異界であり、恐るべき魔界であったのだ。
 ヴォータンを信仰していた魔女もそこにいた。竜も小人もそこにいた。そして人とはまた違った世界を作り上げそこに棲んでいたのだ。魔王もいた。死霊達も蠢いていた。そこはまさしく異界であり魔界であったのだ。
 その中にドルイド達もいた。ケルトの神々を伝える者達が。今沙耶香の心の中にそれが宿っていたのだ。
「このロンドン、そしてイングランドもまた。かっては森に覆われていた」
「魔女もね」
「ええ」
 霧の言葉に頷いた。それはこのイングランド、ブリテンにおいても同じだったのだ。
 マクベスに運命を伝える魔女達。彼女達もまた森の
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