7部分:第七章
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な一面を見せていたのである。
暗殺等はその多くが夜に行われた。そして周りの見えない霧の中でも。そうした流された血の無念が何かとなるのも不思議な話ではないのである。夜も霧も昼の世界、神の世界のものではないからだ。
「その血の無念の集まりが霧に宿る。そして僕になったのさ」
「つまり霧に宿った人の心の負の集まりかしら」
「ネガティブな言い方だね、また」
「魔物にとってこれは褒め言葉だと思うけれど」
「口の減らないお姉さんだ」
「口は減らないのはね。承知しているわ」
にこりと微笑みながら言う。
「けどね」
「けど、何?」
「まだ気になることがあって。聞いてもいいかしら」
「どうぞ」
声はケラケラと笑っていた。
「それでお姉さんの気が済むのならね」
「有り難う」
彼女は返礼した後でさらに問うた。
「マザーグースのことだけれど」
「うん」
「オレンジとレモンはわかったわ」
「何だと思う?」
「あれは黄色い薔薇ね」
沙耶香は言った。
「オレンジとレモンは黄色だから。それで色が同じ黄色い薔薇の香りの時に歌っていた」
「その通り」
声は正解を言うと楽しそうに笑う。
「そしてリング=リング=ローゼィズは」
「お姉さんが思っている通りだよ」
「じゃあ赤い薔薇ね」
「そう」
「あの歌はペストの赤い発疹を薔薇に例えて歌ったもの」
かって彼女自身がハーネストとマクガイヤに説明したことそのままである。
「赤い薔薇の香りに合わせて歌っていた。そうでしょう」
「そう。それも正解だよ」
声はまた笑った。
「それじゃあロンドン橋は何かな。こえは白い薔薇だけれど」
「あの橋は過去何度も落ちているわね。歌の通りに」
「うん」
「そしてこれは隠された話だけれどその度に人柱が埋められた。若い女性のね」
ケルトの頃からある風習である。キリストの教えでは否定されていることであるがこのロンドンはその名自体がケルトのものである。すなわちその奥底にはケルトの因習が残っていたのである。
ケルトの宗教、ドルイド達を中心としたその教えは生け贄を捧げた。人柱はまさにそれだったのである。イングランドの奥底に隠された決して表には出ない影の歴史である。少なくともキリスト教世界においては語られることのない話である。それは闇であるからだ。キリストによって全ては正しく導かれた。こうした生け贄という風習が残っていたということはそれを否定することになるからだ。
「本当によく知ってるね。その通りだよ」
「何で私が知ってるかまでわかるかしら」
「勿論」
霧は答えた。
「お姉さんは普通の人じゃないね」
「ええ」
「魔法使い。それも黒魔術だ」
「ご名答」
沙耶香はそれに答えながら身構えた。
「黒魔術はかってキリスト教に異
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