6部分:第六章
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うか」
「言われてみれば」
マクガイヤはそれを聞いて落ち着いた。そして考える顔になった。
「それにあの怪物は犠牲者を消していますね」
「はい」
「霧の中に連れ去って。おそらくその香りに死を意味するものがあるのでしょう」
「死を」
「それは一体」
「まだ確証が得られませんが」
彼女はそう語りながらふと気付いた。あの時自分が見に纏っていた香りはキンモクセイのものだけではないということに。
(スコッチと)
もう一つあった。それが別のものとも結び付いた。
(まさか)
そこで気付いた。そして二人に対して言った。
「あの」
「何でしょうか」
「この事件、今日で全てを終わらせることができるかも知れません」
「といいますと」
「全ては私に任せて下さい」
彼女はこう申し出た。
「考えがあります。今夜でそれが推察から確信に変わるでしょう」
「推察から確信に」
「ええ。その準備に今から取り掛かりたいのですが」
「どうやら何か策がおありで」
「勿論」
そう答えて不敵に笑った。
「では今日はこれで。その準備がありますので」
「はい」
「それでは貴女に全てをお任せしましょう」
二人はそれぞれ言った。だがハーネストは一言付け加えることを忘れなかった。
「ただ」
「ただ・・・・・・何か」
「御気をつけ下さい。相手は人ではありませぬ故」
「それはこちらも承知しております」
沙耶香はそれに応えて笑った。闇の中に咲く一輪の妖しい花を思わせる笑いであった。
「これが仕事ですし」
「左様ですか」
「ですからお任せ下さい」
その妖しさと美しさを混ぜ合わせた笑いのまま応えた。
「全ては今日終わりますから」
「それでは明日吉報をお待ちしております」
「はい」
「グッドラック」
それがこの日沙耶香が聞いたハーネストの最後の言葉であった。彼はこれが彼女にかける最後の言葉にならぬよう内心神に祈った。だがこれは杞憂であった。
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