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黒魔術師松本沙耶香 妖霧篇
5部分:第五章
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桶エドや墓掘りジョーンズなら喜んで入ったかも知れないですが私は彼等ではないので」
 ハーレムで暴れ回る二人の黒人の刑事達である。暴力と犯罪が蠢く魔都ニューヨークにおいて時には法さえも越えてそれを守る者達である。しばしばやり過ぎることもある猛者達だ。
「入ることはできません」
「ではそしらの巡査部長さんも」
「生憎」
 マクガイヤもそれを断った。
「レディからの申し出は有り難いのですが」
「あら」
「今の生活が気に入っておりますので。申し訳ありません」
「では私はこのまま混沌と無法の世界にいましょう」
「そしてそこから事件を解決する」
「はい。ではその混沌と無法を確かめに行きましょう」
「わかりました。それでは」
「はい」
 こうして三人はオックスフォード=サーカスに向かった。この前のボンド=ストリートと同じくロンドンの中心部にある場所である。その日は晴れで丁度人も多かった。
 赤いバスが路を走り人々がにこやかな顔で歩いている。店があちこちにあり赤や青の看板を掲げている。三人はそこの交差点にやって来た。
「ここです」
 ハーネストがそう言ってその交差点を指し示した。そこにはもう制服の警官達が何人も詰めていた。そして捜査にあたっていた。
「警部、お早うございます」
 その中の若い警官がハーネストを認め敬礼をしてきた。見ればマクガイヤと同じような年齢の若い警官であった。
「お早う」
 ハーネストはそれに返礼した。それからその若い警官に問うてきた。
「何かわかったことはあるか」
「被害者はどうやらこの街に住むロンドン大学の学生らしいです」
「学生か」
「ここのある喫茶店の女の子が好きだったそうで。何度もアタックをかけていたそうです」
「だが振られ続けていたと」
「はい。それで今度こそは切り札を出すのだと学校で言っていたらしいです」
「切り札」
「これのことです」
 そう言って交差点の端に落ちているあるものを指差した。
「!?それは」
「薔薇の花です」
 若い警官はそう答えた。見れば紅の綺麗な薔薇の花びらが路に落ちていた。それは何枚も路に落ち交差点を彩るようであった。
「薔薇の花をプレゼントにか」
「他にもあったようですが薔薇の花を贈ろうとしていたのは間違いないようです」
「そうか」
 ハーネストはそこまで聞いてまずは頷いた。
「花を切り札にか。よくある話だな」
「それを持って心を惹こうとしたようですが。逆に自分が遠くへ引き込まれたようです」
「どうやらそのようですね」
 そこまで話を聞いていた沙耶香がゆっくりと口を開いた。
「そちらの方は。お見受けしたところアジア系の方ですが」
「ロンドンの探偵の方だ」
「探偵」
 ハーネストはこう言って沙耶香の身元を隠した。
「そうだ。今回
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