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黒魔術師松本沙耶香 妖霧篇
3部分:第三章
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よく知られている。自身も細面の美男子であったが彼は美少年を好んだ。前田利家や蒲生氏郷、そして森蘭丸といった美男子でありかつ武芸や知略に優れた者を愛していた。また彼が恐れていた武田信玄もまた当代随一とまで謡われた絶世の美男子であり武田の名将であった高坂弾正正信を愛していた。信玄は彼への恋文も残っている。やはり彼等も同性愛というものは不自然なものであるとは思っていなかったのだ。
 これは江戸時代も同じでやはり男色は普通にあった。小姓もそうであり若衆歌舞伎が風俗を乱すとして禁止されたのもこれがあったからである。もっとも歌舞伎の方は野郎歌舞伎になったが実際は若衆も普通に出ていたのであまり効果はないものであった。実際に女形はそういった男色の修業も行っていた。これは今でもあると言われている。実際にそうした小姓を口説こうとする久米寺弾正のような役や弁天小僧やお嬢吉三のようにあからさまにまで同性愛を匂わせる役も多い。これもまた日本では同性愛が普通だったからである。
 明治にも昭和にもこれは残った。そして同性愛の雑誌も普通にある。今では多少奇異の目で見られるがやはりそうした文化が根強く存在しているのである。これは事実であった。
「我が国では違いましてね」
「オスカー=ワイルドですか」
「ご承知でしたか」
「有名ですからね、あれは」
 沙耶香は言った。アイルランドに生まれたこの作家は耽美派として知られ乗馬服に身を包み美を讃えることを説いていた。彼はとある貴族の美青年と恋仲にあったがこれがもとで投獄されたのだ。海外に逃げていたが何を思ったか強気に出て牢獄に入れられたのだ。出所後は心身共にかなり弱っていたという。少なくとも当時のイギリスだからこそ投獄されたのであり日本ならそのようなことは全くなかったであろう。
「そうした歴史がありますから。日本が羨ましいと考える者もいるわけです」
「そうだったのですか」
「しかし同性愛者ばかりを狙うのならまだ納得がいきますが」
「はい」
「誰でも狙うとなると。正直そうした店に通うのは誰でもありますし」
「まあそうですね」
 これは日本もイギリスもどの国も同じであった。所謂売春や風俗産業はどの時代のどの国にも存在する。禁止しても影でする者もいる。世界最古の職業であり人間が人間である限りなくなりはしないものだ。これは共産圏においても存在した。人間がそうした欲望を持っているのが否定できない以上こうした産業もまた否定できないのである。
「殆ど見境なしと言っていいですね」
「では私が襲われたのも」
「同じではないでしょうか」
 マクガイヤはこう言った。
「貴女の通われた店についてはまあ聞いてはいます」
「左様ですか」
「とある高貴な方の所有でして。まあ名前は伏せておきますが」
「はい」
「遊びでやっておられるよう
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