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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十話 急転
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を持ってきた。帝国の目的はイゼルローン要塞の占拠では無く破壊かもしれません。そうなれば軍人だけでなく民間人にも多大な犠牲が出ます」
「破壊、……つまり要塞主砲の撃ち合いですか?」
カールセン提督が問うとヤン提督が首を横に振った。

「それもありますが……、ガイエスブルク要塞をイゼルローン要塞にぶつけるつもりかもしれません」
「ぶつける?」
カールセン提督が大きな声を出した。彼方此方で“馬鹿な”、“そんな事は”という声が聞こえるとヤン提督が大きく息を吐いた。

「ガイエスブルク要塞を此処に持って来た以上、他の要塞を持って来る事も可能です。イゼルローン要塞の占拠に拘る必要は無い」
「しかし、そんな事は……」
「ヴァレンシュタイン元帥を甘く見るな!」
抗議しようとした士官をヤン提督が激しく叱責した。提督が大声を出すなど珍しい事だ、皆驚いている。

「シャンタウ星域では同盟軍は一千万の将兵を失った。あれほど強勢を誇った門閥貴族も一年持たずに滅んだ。どちらもヴァレンシュタイン元帥が指揮を執った。彼の狙いは同盟、フェザーンを降して宇宙を統一する事だ。そのために着々と準備してきた。何故彼の恐ろしさを理解しようとしない?」
「……」
「彼を甘く見るな!」
言い終えてヤン提督が大きく息を吐いた。

「イゼルローン方面に帝国軍が来なかったのもこれが理由だ。フェザーン方面の同盟軍を戦闘で退けなくする。機を見てイゼルローン要塞を破壊して一気に同盟領に侵攻する。フェザーン方面の同盟軍が慌てて艦隊を撤退させハイネセンを守ろうとすれば追撃を受けて大損害を被るだろう。少ない兵力が更に少なくなる」
口調は落ち着いたものになったが内容は深刻なものだった。彼方此方で呻き声が聞こえた。

「例えぶつけなくてもイゼルローン要塞の優位は失われた。突破は時間の問題だろう。ここで戦えば徒に犠牲が増えるだけだ」
ヤン提督が司令室を見回した。誰も反論しようとしない。カールセン提督が“分かりました、要塞を放棄しましょう”とヤン提督に従うとヤン提督が“有難うございます”と礼を言った。

「キャゼルヌ少将、直ちに脱出作戦を実行に移して欲しい」
「ハイネセンに確認はとらなくて宜しいのですか?」
キャゼルヌ少将が問うとヤン提督は首を横に振った。
「時間が無い、先に準備をしてくれ。もし要塞の放棄が認められなくても民間人は退去させる。ここは危険だ」
「承知しました」
キャゼルヌ少将が足早に司令室から出て行く。

「時間が有りませんな」
カールセン提督がキャゼルヌ少将が出て行ったドアを見ながら言った。
「敵が此処に来るまで十二時間といったところでしょう」
「間に合いますか?」
カールセン提督が問い掛けるとヤン提督が大きく息を吐いた。
「……多分。……脱出
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