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黒魔術師松本沙耶香 妖霧篇
2部分:第二章
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ットランド=ヤードまで向かう。程無くして到着した。
 そしてタクシーを出た。高い帽子の警官達の敬礼を受けながら建物の中に入っていく。そして昨日の部屋に来た。そこにはもうハーネストとマクガイヤが待っていた。
「お早う御座います」
 二人は沙耶香の姿を認めると挨拶をしてきた。彼女もそれに返す。
「はい、お早う御座います」
 挨拶も返事もやはり英語である。彼女はロンドンに到着してから英語以外を話してはいなかった。だが日本の訛りを感じさせない見事な英語であった。それはネィティブのイギリス人のそれよりも綺麗な発音であった。
「それでは早速仕事に取り掛かりますか」
 ハーネストは上着を着ながらこう言った。
「昨日貴女がその唄を聞かれた場所ですが」
「はい」
「まずはそちらに向かいたいと思います。宜しいでしょうか」
「はい。では案内致します」
「では」
 マクガイヤも一緒であった。こうして三人は本部を出てマクガイヤの運転する車に乗り込んだ。そして沙耶香の案内で昨日の場所に向かうのであった。
「そういえば御二人のことは詳しく聞いていませんでしたね」 
 沙耶香は車の中でふとこう言った。
「ハーネストさんの方が年上に見えるのですが」
「ええ、その通りです」
 助手席に座るハーネストが後部座席の沙耶香に応えた。そしてその顔を彼女に向けてきた。
「私の方が四つ程上でして」
「そうでしたか」
「階級も。私は警部です」
「警部にしてはお若いですね」
「まあ色々とありまして」
 彼はここでは自分のことをあまり語ろうとはしなかった。だが何かあるようである。
「私は巡査部長です」
 今度はマクガイヤが名乗った。
「私もこの若さで、とよく言われますね」
「そうでしょうね」
 沙耶香もそれに頷いた。
「日本ではその御歳で巡査部長はそうそうおりませんから」
「日本でもですか」
「はい」
 彼女は頷いた。
「どういうわけか巡査部長がなるのが一番難しいとさえ言われておりますし」
「ほう」
「イギリスでもそうでしたのね」
「まあ我が国はそちらの御国とは事情が違いますからね」
 ハーネストがここでこう言った。
「我が国は。貴族社会ですから」
「はい」
 それはもう知っていることであった。こくりと頷く。
「昇進にもそうしたことが影響したりするところがまだあるのですよ。まあ平等ではありません」
「それは我が国でも同じですが」
「明確には分かれていませんね、欧州みたいね」
「はい」
 それは事実であった。今の日本ではそうした明確な階級というものはない。実情はどうあれ、だ。これは欧州とは全く違うことであった。
「そういうことですよ。これは非常に大きな差でして」
「民族が違うということですからね」
「御存知でしたか」
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