第6章 流されて異界
第122話 十二月十八日
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完全に肯定したとは考えにくい反応と捉えるべきか。
「わたしは彼の事を普通の人間だと考えていた」
俺の先ほどの言葉を肯定するかのような彼女の言葉。そう言えば、渡された資料には、彼女はその自らの本名を名乗らずに現代社会で生活を続けて居た人物の事を、まったく疑問に思う事なく他の人間と同じ対応で接触していた、……と言う風に記載されていた。
確かに、その不審な人物の事を普通の人間と感じていたのなら、涼宮ハルヒ関係の事件の裏に潜む存在が危険な邪神だとは分からずに排除しようとする可能性はある。
それだけ高度な魔法が行使されていたのでしょうが……。今の俺では絶対に為す事が出来ない魔法。
流石に自らの存在を古の邪神に擬える為に、それだけ高難度の魔法を維持し続ける。この世界はハルケギニア世界のように中世ヨーロッパなどの、情報の伝播速度の遅い世界ではない、二十一世紀の世界。其処で自らの名前……偽名すらも持たず、名乗らず、生活を続けて行く。ここから生み出される世界の歪みは、おそらく世界を簡単に変えるだけの力を持って居るでしょう。
例えば、一度完全に阻止されて仕舞った黙示録の世界の再現なども可能なほどの……。
「わたしの目的。それは、わたしの暮らしていた世界を歪めていた全ての非日常の排除」
その非日常を守ろうとする者の排除。
普段通りの淡々とした、一切、熱のこもらない彼女の口調。但し、もし、彼女の目的がソレならば、それは彼女の造物主たる情報統合思念体の排除だけに留まらず、彼女本人の排除も含まれる事になる。
そして、当時の彼女自身が気付いて居なかったとしても、結果として自らの名前を明かす事もなく現代社会に置いて日常生活を営む事の出来る存在の排除にも繋がる、と言う事も確実。
成るほど。これが先ほど彼女が発した戸惑いの後の肯定の意味か。確かに彼女が全ての目的を達しようとするのなら、最終的にはその名付けざられし者との直接対決に至った事は想像に難くない。
ただ、彼女の説明によって、何故、陰の気。……自らが置かれた境遇に対する怒りや恨み、憎しみなどから発生した心であったとしても、有希が最初の段階で俺と契約出来る存在であったのか、と言う理由が判ったような気もしますね。
それは相手がクトゥルフの邪神であったから。
確かに有希自身が完全に堕ちて居た訳ではなかったのでしょう。そもそも、創造物が反乱を企てて居る事に気付かない創造主はいない。
おそらく有希の企てなど、情報を収集する事によって進化の極みに到達したと自称していた情報統合思念体に取っては、最初から分かり切っていた出来事。もしかすると、最初からその事件を有希が起こすようにプログラミングしていた可能性さえ存在していると思います。
その辺りの
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