第6章 流されて異界
第122話 十二月十八日
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ら、其処には何か彼女なりの理由が有ったのでしょう。
おそらく、試合中に自称リチャードくんに言われた事が、彼女の行動の理由だとは思いますが……。
「わたしの計画はおそらく思念体の知る事と成って居たと思う。それに、わたしは思念体のバックアップがなければ、自らの生体を維持するだけに十分なエネルギーを生成する事は出来ない」
それでも尚、起こそうとした事件。もし、それが事実なら、その事件を起こそうと考えた時に、既に彼女には心と言う物が萌芽しかかって居た事になる。
アリやハチ。いや、彼女――長門有希と言う存在により相応しい比喩は歯車か。歯車は自分の役割に疑問は持たない。まして不満など感じる訳がない。
本当に自分の為している事が正しい事なのだろうか、などと悩む歯車は存在していないし、まして、自らの意志で勝手に行動し始める歯車など聞いた事がない。
これは、この事件を画策した段階で長門有希に心が萌芽し掛かって居た、と考える方が妥当でしょう。
ただ、それは囚われの身である自らの現状に対する不満などの負の感情から発生した、非常に危険な……。そのままならば、おそらく俺との契約は不可能な存在……邪霊として封じなければならない類の存在として誕生していたはず。
陰の感情から発生した物は、その感情に支配され続ける事の方が多い。そして、その感情が更に多くの陰の感情を引き寄せる事となり――
結果、大きな霊的な災害を引き起こす可能性が高く成りますから。
「わたしはわたしの目的の為、春の暴走事件の際に情報の凍結処理を受けていた朝倉涼子を復活させ、事件の根幹を為す存在の排除に動いた」
自らの罪の告解を行うかのような有希の言葉。
しかし――
事件の根幹を為す存在の排除――。確か、この世界を混乱させていたのは、大き過ぎる呪力――邪神の魔力を制御し切れない無自覚な大地母神ハルヒ。そして、もし、そのハルヒの排除の為に事件を起こしたのなら、彼女の観察の為に有希を送り込んだ情報統合思念体の意志とは正反対の――
そう考えてから、其処に違和感がひとつ。
そう、事件の根幹を為す存在。これは……ハルヒだけではない。おそらく、そのハルヒと接触する事によって情報爆発と言う歴史や世界の在り様を変えさせた存在。その後、北高校に進学後に更に世界と彼女らの在り様に影響を与えた存在が居た。
そいつは――
「――名付けざられし者の排除か?」
自然と口に出て仕舞う言葉。但し、これは今現在の有希の能力を持ってしても危険な企て。
成功すれば良い。ただ、失敗すれば……。
その俺の問い掛けに対して、一瞬の戸惑いにも似た感情を発する有希。
しかし、その後に僅かな肯定。ただ、普段の彼女には感じない曖昧な感覚。これは、
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