第6章 流されて異界
第122話 十二月十八日
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つきゅう》の太上老君などなら、その程度の事など簡単に熟して仕舞うはず。まして、俺ならばウカツにアカシック・リーディングを行って回避しがたい未来を視て仕舞う可能性がゼロでは有りませんが、そう言った方々ならば、そんな初歩的なミスを行う訳もない。
しかし、
「誰も未来視など行った訳ではない」
有希から発せられたのは僅かな否定。そして、
「その日付はわたしの中に存在する未来の記憶。現在では起こり得ない未来の記憶」
未来の記憶……。そう言えば、有希は何度も同じ時間をループするような世界を生きて来て、その結果、魂を得た人工生命体だったはず。ならば、彼女の持つ記憶の中に、未来の出来事が存在していたとしても何も不思議ではない。
但し、
「それなら、今年の十二月十八日に事件が起きる可能性はゼロではないが、起きない可能性の方が圧倒的に高いはずやな」
おそらく事件発生の可能性は、俺たちが普通に生活していて、何らかの危険な事件に遭遇する程度。その程度の確率となるはず。確かに俺は事件に巻き込まれ易い体質であるのは認めます。ですが、それでも毎日毎日危険な事件に巻き込まれて生命の危機に立たされている訳では有りませんから。
確かに彼女が俺を召喚してくれた事によって生命を――魂を救われています。もし、彼女によって召喚されていなければ、俺は最果ての絶対領域へと閉じ込められ、二度と自力での脱出は不可能な状態と成って居たでしょう。その事については感謝をしています。しかし、それとこれとは別。その程度の些事で一々夜中に起こされていたのでは流石に……。
しかし――
「正直に言う。わたしも何も起こらないと考えて居た」
でも今日の野球の試合は、以前の……あなたが現われない世界でも野球の試合は行われ、結果、わたしたちのチームは勝利していた。
俺が一瞬感じた少しの不満が彼女に伝わった……とは思えない。しかし、寝起きの俺が、機嫌が悪い事を知っている有希が淡々と続けた。
この有希の言葉が真実ならば、これは歴史のつじつま合わせに当たる出来事の可能性はある。更に言うと、その歴史のつじつま合わせが、有希が言うトコロの十八日から発生する事件の方に作用しない、と言う保障も何処にもない。
そう、この辺りに関しては俺の知識などでは想像も付かないレベルの話。もっとも、そもそも過去から未来へと繋がる歴史の中のつじつま合わせと成る以上、今と過去の一部しか分からない俺などが想像出来るレベルの事象である訳がないのですが……。
「わたしの記憶の中にある十二月十八日から発生する事件は、わたし自身が起こす事件」
表面上……言葉のテンポや、声の大きさは変わらず。但し、彼女の心の奥深くから、かなり大きな陰の気を放っているのが感じられた。
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