第6章 流されて異界
第122話 十二月十八日
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海よりも深くため息をひとつ。そのため息が口元を白くけぶらせる事により、現在の室温が外気温と差して違いがない事を実感させる。
少し手を伸ばし、俺から一メートルほど離れた場所に正座をするパジャマ姿の少女の手を握る。白く華奢なイメージの彼女の手は、まるで氷細工の如き儚さと、そして同じだけの冷たさを併せ持っていた。
そのまま俺の元に彼女を、自らの傍らへと引き寄せる。
「いくらなんでも、この手は冷たすぎるだろうが」
何故、仙術を使って部屋を暖めて置かない。暗にそう言う意味を籠めて――
何の抵抗もせず、俺の目の前に移動して来る有希。その彼女を右側に置き、二人並んで座った状態の肩に毛布を羽織った。
これで寒さは防げる。ついでに言うと、正面から彼女の瞳を覗き込まない状態なので、彼女が何を言い出したとしても狼狽える可能性も低くなる……と思いますから。
何故か普段よりも俺の右側から彼女の強い視線を感じる。但し、それは少しの不満の混じった視線。
繋がれたままの右手と左手が、手の平同士を合わせた……まるで恋人同士のような繋ぎ方へと変えられる。
……彼女自身の意志で。
そうして、
「あなたが召喚された理由。それは、この十八日から何か事件が起きる可能性があるから」
訥々と話し始める有希。しかし……。
「悪い。その前にもうひとつ聞きたい事が出来たのやけど、構わないか?」
折角前に向いて進み始めた話の腰を折るかのような再びの問い掛け。ただ、その程度の事は気にする事もなく、右肩に触れるかのような近い位置に居る有希から肯定を示す雰囲気と、僅かに揺れる毛布と言う答えが返された。
成るほど。それならば――
「その事件が起きる事を、誰かが未来視を行って知ったのか?」
かなりの違和感を持ってそう尋ねる俺。確かに、この世界にも未来視を行う術者は居るとは思います。更に其処から一歩進めて、アカシック・リーディングの能力を有している者さえいるでしょう。
しかし、アカシック・リーディングは非常に危険な能力。その視て仕舞った未来が自分たちに不都合な未来だった場合、それを回避する手段が……絶対にない訳ではないのですが、それでもかなりの労力を費やさなければ回避出来ない代物となる。
その未来がもし世界を滅ぼす未来に直結する未来だった場合、一体、誰がその責を負う事と成るのか。
そう、先ほどの有希の台詞の中で、俺が覚えた違和感の正体はその具体的な日付。もし、十二月十八日に事件が起きる事が分かっていて、その事件が危険な事件だと言う事が分かっているのなら、素直に事件自体が起こらない未来を選択する。
今の俺には無理でも、水晶宮の上層部や崑崙に暮らすふたりの女仙。それに|兜率宮《とそ
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