第二百十八話 太宰府入りその七
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「出家して退いてからはな」
「これといってですね」
「動いておられぬ」
家督を嫡男の秀家に譲ってからだ。
「別にな」
「だから宇喜多殿はですね」
「皆気にしておらぬが」
「松永殿は」
「やはり気をつけねばな」
「天下の為にも」
「上様の為にもな」
こう言ってだ、九鬼もまた水軍を率いる立場から松永を警戒していた。そうしつつ玄界灘を渡る軍勢を守っていた。
織田軍の先陣は海を渡ると再びだった。
陸を進む、そうしてだった。
信玄と謙信は二人でだ、宗麟の居城に赴いた。そうして既に出家して頭を剃っている口髭の壮年の男に言った。
「武田晴信入道信玄です」
「上杉輝虎入道謙信です」
まずはこう名乗ったのだった。
「我等織田信長の名代としてです」
「参上しました」
「これより大友殿に助力し」
「島津を仕置します」
「お願い申す」
宗麟は主の座にいつつもむしろ二人より姿勢を低くして応えた。
「最早我等はです」
「左様ですか」
「島津家は」
「全ての仕置は従います」
信長にというのだ。
「ですから」
「わかりました、では」
「既に岩屋城に軍勢は進めています」
「まずは岩屋城をです」
「お救いします」
「かたじけない」
宗麟はただこう言うばかりだった。
「ではそれがしも兵を率い出陣致しましょう」
「はい、では」
「共に轡を並べましょう」
こうは言ってもだ、宗麟の出陣はこれからだった。信玄と謙信は彼の前から下がるとすぐに馬を走らせてだった。
先行させていた 二十四将、二十五将を追う。周りはそれぞれの家の旗本達がおり周りを固めている。その中でだ。
謙信は信玄にだ、こう問うた。
「宗麟殿ですが」
「うむ、やはりな」
「覇気がありませぬ」
「消えておるな」
「そうなっていますな」
「やはりな」
それも当然だと言う信玄だった。
「耳川で負け。領地内でも国人達が離反してな」
「内外が乱れに乱れ」
「最早どうしようもなくなっておるからのう」
宗麟一人ではというのだ。
「それではな」
「往年の覇気が消えるのも道理」
「そうなるわ」
「最早大友家は風前の灯火」
「宗麟殿ご自身の所領もな」
その領地の中のそれもというのだ。
「然程な」
「ありませぬな」
「龍造寺家もそうじゃが」
「あの家も今では」
「鍋島殿だけが頼りじゃ」
家老である彼のみがというのだ。
「そうした有様じゃからな」
「織田家だけが頼りですな」
「そういうことじゃな。ではな」
「はい、まずはです」
「岩屋城じゃ」
信玄は謙信に強い声で言った。
「あの城に向かいな」
「高橋殿と立花殿をお救いしましょう」
「普通に行けば間に合わぬ」
信玄は馬を駆けさせつ
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