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黒魔術師松本沙耶香 仮面篇
31部分:第三十一章
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頷くのであった。
「その通りじゃ。仮面は隠しているようで隠してはおらぬわ」
「心は隠せないもの」
 沙耶香は言う。
「仮面でもね。むしろ仮面にこそ現われるものなのかもね」
「難しいものじゃな。そこは」
「そうね。醜いものも美しいものもあるのが人だから」
 彼女はまた述べる。
「それが出るっていうのは本当に怖いわね」
「確かにな。だから仮面は怖い」
「その仮面も怖いでしょ」
 沙耶香は能面に言及した。
「見れば見る程」
「ふむ」
 老婆は沙耶香の言葉に誘われるままに能面を見続けていた。とりわけその目を。
「口元は笑っているが目はかなり恐ろしいな」
「目も笑っているけれどね」
「そうじゃが。どうにも」
 老婆は女の笑みに恐ろしいものをさらに感じだしていた。それは見れば見る程恐怖を感じるものであったのだ。彼女にもわかってきた。
「怖いのう。笑っておるのに」
「それがその仮面の怖さなのよ」
 沙耶香は笑って述べる。秘密を隠したような笑みで。

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