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真田十勇士
巻ノ六 根津甚八その八
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「根津殿、実は拙者は拙者自身の家臣を探しているでござる」
「それでそれがしにお声を」
「左様でござる、根津殿は道場をお持ちと聞きますが」
「はい、しかし」
「しかしとは」
「道場は実はそれがしは師範代でして」
 道場の主ではなく、というのだ。
「道場主は師が務めております」
「そうでござったか」
「師範代は弟弟子も充分務まります」
 根津は幸村にこうも言った。
「ですからそれがしがおらずとも」
「それでは」
「これより師のところに事情を話しに行って宜しいか」
「はい」
 幸村は根津のその申し出をよしとした。
「それでは」
「はい、では」
 こうしてだった、根津は彼の師と話をしに行ったがここでだった。幸村と穴山達四人も同行して彼の師の家に参上した。
 根津の師の家は質素だが確かな造りだった、そこに道場もあった。根津はその道場に入り稽古に励んでいる若者達の挨拶に自身も挨拶を返してだった。
 奥に座している老人、彼の師にだ。幸村を紹介した。
「こちらの方が真田幸村殿です」
「あの有名な」
「はい、先程それがしを助けて下さいました」
 このこともだ、根津は話した。
「そしてそれがしはこの方に家臣になる様に誘われまして」
「はじめまして」
 幸村も根津の師に挨拶をした。
「真田幸村であります」
「ふむ、いい目をしておられる」
 師は幸村のその目を見て言った。
「確かに素晴らしき方じゃな」
「有り難きお言葉」
「甚八の主に相応しい」 
 師はこうも言った。
「そして」
「そしてとは」
「こちらの方々は真田殿の家臣ですな」
 今度は穴山達を見て言ったのだった。
「こちらの方々も見事ですな」
「おお、拙僧達もでござるか」
「はい」
 師は清海にも答えた。
「よい目をしておられる、そして非常にお強い」
「ははは、一目で見抜かれたか拙僧達のことを」
「どうも貴殿はおっちょこちょいで酒乱の気がありますか」
「いや、その言葉はどうも」 
 清海は師の今の言葉にはその巨体を小さくさせて応えた。
「言われると」
「ははは、しかしどの方も見事な方」
 師は再び笑って言った。
「これは甚八が共に進まれるべき方々」
「さすれば」
「甚八、これはまさに運命の出会いぞ」
 今度は根津に対して言った。
「よいか、ならばな」
「お仕えして宜しいのですか」
「むしろわしから言いたい」 
「お仕えせよと」
「そうじゃ、是非共な」
 まさにというのだ。
「幸村様にお仕えせよ」
「では道場は」
「わしもおるし倅達もおるし他にもおる」
 腕の立つ道場を背負うべき者はというのだ。
「だから案じるな」
「さすれば」
「行け、時折文でも送って参れ」
 師は笑ってこうも言ったのだった
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