28部分:第二十八章
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そうだよ。また」
またしても声だけになった。だが妖気は残っていた。
「そう簡単にはいかないよ、今度は」
「今度もなのね。視界から」
「流石にこれは簡単にはいかないよ」
動きが早くなっているのがわかる。沙耶香もそれがわかっていた。だがそれで彼女は翼を生やしたままそこに留まるだけであった。
「さあ。いよいよ」
「生憎だけれど私の顔は顔だけよ」
沙耶香は妖しく微笑んで述べた。
「だから。貴方にもやられはしないわ」
「けれど。それは無理だと思うけれど」
下からだった。不意にあの刃が襲い掛かってきた。
投げられたものなのは言うまでもない。沙耶香はそれを首を後ろにやることでかわすのだった。余裕に見るがそれは紙一重であった。
「危なかったわね」
「あれをかわすなんて流石だね」
今度は上から声がする。もう移っているらしい。
「けれど。何時まで続くかな」
「だから何時までもよ」
翼をはためかせて答える。
「こちらには翼があることを忘れないことね」
「その羽根のことはもう知ってるよ」
闇の中にくぐもった笑い声が響く。
「悪いけれどね」
「あら、それも全部かしら」
「当然だよ」
笑い声はまだ続いていた。
「だって。それしか考えられないじゃない」
「甘いわね」
沙耶香はそれを聞いて呟くのだった。
「さっきのだけでわかったなんて」
「違うの?」
「残念だけれど違うわ。この翼は飛ぶ為と羽根を飛ばすだけのものではないのよ」
「ふうん。そうなんだ」
道化師の声はそれを聞いても一向に焦った様子はなかった。
「だったら。それも見せてよ」
「見たいのね」
「うん」
また笑い声を含ませて答えてきた。
「早く。僕に見せてよ」
「じゃあ。行くわよ」
その声と共に背中の黒い翼が大きく羽ばたかれた。するとそれが瞬く間に無数の羽根に変わり天に向かって放たれたのであった。
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