暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
侵食する意思
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持ち上げ、祭壇に向き直った。
 クロスツェルの体を利用して女の信徒達を喰っていた、まさにその場所を指先で正確に辿り、愉快そうに口角を上げる。

「神父の魂を喰い、その器で処女を犯していたか。悪魔としてはまずまずの働きだが、美しいやり方とは言えないな。……なるほど。急いていたのか」
「……!?」
「結界が壊れた理由は、『クロスツェル』と『ロザリア』………… っ!?」

 レゾネクトの口元から笑みが消える。
 細い目が、異様なほど丸く見開かれ。
 祭壇が音を立てて真っ二つに裂けた。

「貴様…………アリアを汚したか!!」

 レゾネクトの怒号に合わせて、礼拝堂内に紫色の稲妻が三本走った。
 凄まじい轟音(ごうおん)と風圧が木製の長椅子を弾き飛ばし。
 壁に掛けられていたタペストリーを千々に引き裂く。
 神父の体も軽々と吹き飛ばされ、入口付近の壁に叩き付けられる。

「が……っ! はっ」

 体の奥で砕け、潰れる鈍い音がして、喉から赤黒い血が噴き出した。
 稲妻が収まり、激痛に苛まれた体が崩れ落ちる。

「彼女を悪魔の力で汚すなど! 消滅する覚悟あってのことだろうな!?」
「っぐ……!」

 歩み寄ってきたレゾネクトに腹部を思いきり蹴られ、踏みつけられた。
 吐き出した血が宙に飛び散り、レゾネクトの靴を濡らす。

「貴様はアリアを憎んでいたな。封印された時は、さぞ屈辱だったろう? だから、()()で存在を消し去ってやる。死の間際まで彼女に敗北する苦渋を思い知れ」

 そう言って、レゾネクトが両手に構えたのは。
 ()()()()()()()弓矢。

「……な……んだ、と」

 ()()は、アリアの色。アリアの力。
 闇の王レゾネクトが持ち得ない筈の、神聖なる光。
 闇を滅ぼす、女神の力。

「眠りすらない虚無に散れ、ベゼドラ」

 光の弦が引き絞られる。
 見開いた金色の目に、(やじり)が煌めいて。
 薄い緑色の閃光が視界を埋め尽くした。


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