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黒魔術師松本沙耶香 仮面篇
22部分:第二十二章
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「私はそうは思わないけれど」
「そうなのか」
「ええ。苦戦は楽しいものではないわ」
 彼女にとっては。戦いとはそうしたものではないのだ。
「そうか。では見つけておるな」
「ええ」
 また笑って答える。
「わかったわ。後は会うだけね」
「そう簡単に会えそうもないがのう」
「さて。それはどうかしら」
 笑ってそれは煙にまくのだった。
「そうともばかり限らないわよ。で会いは偶然だから」
「それが偶然ならばのう」
 老婆も沙耶香が何を言いたいのか察した。そうして彼女も思わせぶりに笑って言うのだった。
「作られた偶然でなければな」
「作られたものでも偶然は偶然よ」
 沙耶香はあえてこう述べた。
「それでもね」
「では御主が宝石達を手にしていくのも偶然か」
「必然でもあるわ」
 随分都合のいい言葉であった。
「宝石は私の手の中に入るべきものだから」
「それはちと違うと思うがのう」
 流石にこれは随分と自分勝手というか唯我独尊の言葉に聞こえた。
「まあそれでも宝石を弄び続けるのが御主じゃしな」
「今日はまずは一人」
 沙耶香は言った。
「もう一人といきたいところだけれど」
「やれやれ、もてることじゃ」
 これはやっかみもある言葉であった。もてる女に対してではなくそれだけ魅了させることができることへのやっかみであった。どんな歳でも同姓でもどんな嗜好でもそれを感じずにはいられなかったのだ。
「憎いことじゃて」
「じゃあまた」
 沙耶香はそこまで言うと踵を返した。
「伝えたいことはもう伝えたし」
「今度は何処へ行くのじゃ?」
「そうね。今度はサウスブロンクスか地下鉄でも行こうかしさ」
 ふらりとした感じで答えた。
「そう考えているけれど」
「今はどちらも平和じゃぞ」
 かつてはニューヨークの治安の悪さの象徴だった地下鉄とサウスブロンクスであったが今は違う。ニューヨークもかなり治安がよくなりどちらも随分と穏やかになったのだ。老婆はそれを沙耶香に告げたのである。
「生憎じゃがな」
「それならそれでいいわ」
 だが沙耶香はそれでもいいと言うのであった。
「それでも行かないといけないし」
「何か知っておるのじゃな」
「そうよ。だから行くのよ」
 そういうことであった。沙耶香とてただ単に遊びに行くわけではないのだ。そこには目的もある。もっとも彼女の場合は目的もなく美女や美少女を探し出し篭絡する為や美酒を楽しむ為に行く場合もあるのであるが。そこもまた沙耶香である。
「じゃあ」
「そこで宝石を見ればどうするのじゃ?」
「その時は決まってるわ」
 背を向けた時に声をかけられた。それで顔だけを振り向けて述べるのであった。
「頂くわ」
「なら行くがいい」
 老婆も沙耶香がそう言うと
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