暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
狂宴
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餌食になった女性達と同じく、灰になって消えたのだろう。
 ベゼドラは彼を喰ったと言っていた。
 それがクロスツェルの願いだったと。
 ロザリアを奪われるのではないかと怖れ、ウェーリの存在を否定したと。
 自分と親しく話している男が、よほど許せなかったらしい。

 ウェーリは、こことは違う下町で出会った、数少ない親友の一人だった。
 それだけ。
 久しぶりに会って懐かしいと思ったのは確かだが。
 クロスツェルが嫉妬するような間柄ではなかったのに。
 つくづくバカ野郎だ。



「最近、ロザリアさんがいらっしゃいませんのね」

 お体の調子でも崩されたのですか? と。
 礼拝に訪れていた老齢の女性が、心配そうに首を傾げる。
 クロスツェルのフリをしたベゼドラは、にっこりと微笑んで答えた。

「彼女には良い縁談がありましたので。今頃は、お相手の方と幸福な時間を過ごしているでしょう」

 老女は目を丸くして、シワだらけの指先を口元に当てる。

「まあ。そんな気配は見受けられませんでしたのに。良いことですけれど、少々残念ですわ。もうお会いできないのかしら」
「すべては女神アリアの思し召し。私も、あの笑顔が見られないと思うと、灯火が消えたような心地ですが。今はただ、彼女の幸せを願うばかりです」
「……そうですわね」

 神父が胸の前で両手を組み。
 教会の入口を飾るレリーフに向かって頭を下げる。
 それにならって、老女も軽く頭を下げた。

「それでは神父様、ごきげんよう」
「貴女に女神アリアの祝福が舞い降りますように」

 今日の礼拝客、最後の一人を見送り、教会の門を閉じる。
 何気なく、澄んだ紫色の空を見上げて。ベゼドラは教会の中へと戻った。



「タヌキみたいだな、お前」

 教会内の戸締りを終えてから、燭台を持って地下室に入るベゼドラ。
 その様子を映像として見ていたロザリアが、床に座ったまま顔を上げた。
 入り様の一言に、ベゼドラは首を傾げる。

「何の喩えだ?」
「私はお前と結婚した覚えなんかない」
「!」

 地下室に閉じ込められて、約二ヶ月。
 映像はほとんど丸一日、いつでも自由意思で見られるようになっていた。
 この映像については、やはりベゼドラも知らなかったらしい。
 金色の目が少しだけ見開かれた。

「……『遠見』の力か。何故そんなモノを使える?」
「知らない。お前が何かしたんじゃないなら、アリアの思し召しかもな」
「アリアはお前だ」
「それこそ知るか。私はロザリアだ。バカな神父が遺した『ロザリア』が、私の名前だ」

 浮浪時、着ていた服は盗んだ物だった。
 靴も食べ物もほとんど盗品。
 稀に施しとして貰った物もあるが、全部消
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