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黒魔術師松本沙耶香 仮面篇
16部分:第十六章
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んな運動なのかな」
「ベッドの上での運動よ」
 姿を現わしてすぐにそこで妖しい笑みを浮かべるのであった。
「相手が必要だけれどね」
「よくわからないけれどお姉さんの好みは普通じゃないみたいだね」
 道化師もそれは感じ取っていた。だがそれは勘によるものではなかった。
「匂いでわかるよ」
「ふふふ、匂いなのね」
「だって香水の香りが何個かあるから」
 そういうことだった。沙耶香は自分の付けている香水の香りの他にも常に幾つかの香水の香りを身に付けている。それ等は全て彼女が抱いた美女達のものである。
「それに肌の香りもね」
「いいものよ」
 目と唇がまた細まった。
「奇麗な女の人の香りも肌もね。身に纏うというのは」
「僕にはわからないね」
 だがそれは道化師の好みではないようであった。
「肌と肌を重ね合うなんて面白くないよ」
「そうなの。それが一番いいのに」
 そんな彼の言葉を笑って否定するのだった。
「悲しいことだわ」
「僕は別に悲しくないからいいよ」
 姿を消したまま述べる。
「お面さえあればいいから。だから」
 また動いてきた。それがわかる。
「今度こそ。貰うよ」
「あげるつもりはないわ」
 沙耶香はその場に留まったまま述べる。
「だって。貴方の隠れ方がわかったから」
「僕の隠れ方?」
「ええ。ほら」
 宙を舞う木の葉を。黒い炎を投げて焼き消したのであった。
「木の葉を!?」
「さあ、足場は消したわ」
 そのうえでこう述べた。
「足場を消したなら」
「くっ」
 慌ててナイフを出す。そこにまた黒い炎を投げる。
「そうするのはわかっていたわ」
 炎が何かを撃った。その塗炭道化師は闇の中から姿を現わしたのであった。

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