1〜2期/啓編
K17 片翼では飛べない
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らば、同じ戦士が立て直すのが筋というものです」
《なるほど。翼さんらしい理由ですね》
「それと、もう一つ――立花と小日向未来の間にあるものについても」
立花と小日向未来のクラスメートによると、二人は親友を通り越して熟年夫婦かと思うくらいに仲がいいとか。寮では同室で、登下校も二人で。
そもそも中学校が同じで、リディアンに入学したのも、立花が小日向未来を追いかける形で、だったらしい。
立花の態度がおかしいというんじゃない。私だって奏に対しては恥ずかしいくらい甘えていた。
ただ、立花の小日向未来への感情は少し歪な気がする。
きっと彼女たちをそんな関係にしてしまったのは、2年前の私たちのライブ。
「……知らなくてはいけないのです。立花弟が語った以上のことを。あの悲劇を起こした人間の一人として」
《翼さん……。分かりました。微力ながらお力添えします》
「すいません。お願いします、緒川さん」
通信機を切ってポケットに入れ直す。
ナビを点けて、立花の実家の地番を登録する。
――そう遠くはないな。弟のほうが自転車でしょっちゅう来られるわけだ。
バイクに跨り、エンジンをかけ、ハンドルを回して発進した。
立花本人が出ないだろうとは思っていたが、まさか弟のほうが出迎えるとは思わなくて。
「立花――姉はいるか?」
「学校はいいんすか」
「休んだ。そう言うそっちこそ」
「おれも休みましたが何か? あと響ちゃんですけど、おれがタダで会わせると思います?」
「思わない。あなたはお姉さんにぞっこんみたいだから」
「分かってんならお引き取りクダサイ。二課の誰が来ても響ちゃんには会わせませんから。じゃ」
ガラガラと閉まる玄関の戸。私は足をサッシに入れて邪魔をした。
「づ…!」
「は? ……わあーーーー!? な、ただのブーツで、な、何トンデモな真似してくれてんすか!」
立花弟はサンダルを脱ぎ捨ててバタバタと家に上がって行った。
戻って来た立花弟の手には、昔ながらの常備救急箱。
慌てる彼は私を三和土に招き入れ、玄関の段差に座らせた。意外な形で入れてしまった。
「靴と、あと靴下も脱いでっ。骨イッたらどーする気だったんすか、アイドルっしょ!?」
立花弟はてきぱきと応急処置をしていく。
さらに、挟んだ部位が膨らんで後から痛くなるからと、帰り用にビーチサンダルまで貸してくれた。
……何というか、彼があの立花の弟なんだって今分かった気がする。
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