第153話 蔡瑁反乱画策
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た。そこには確かに荊州牧の印璽が押されていた。この絹布が劉表の発給した正式な命令書であることを証明していた。
突然、蔡瑁は低い声で笑い声を上げた。
「義姉上の命令であろうと私に話を通すのが筋だろう」
蔡瑁は怒気を孕んだ声で隊長に言った。
「張允様が病に伏していると嘘を私達に告げた蔡徳珪様に筋を通す必要はありますまい。それに私達を襲撃していい理由にならないではありませんか? このこと劉荊州牧にご報告させていただきます」
「秋佳をここに置いて宜城に帰れ」
蔡瑁は冷めた目で隊長に言った。張允は蔡瑁の言葉に怯え、劉表の兵の一人の腰に捕まっていた。
「張允様の姿を確認した以上、このままおめおめと宜城に帰るわけにはいきません。張允様はお渡しできません」
蔡瑁は鼻を鳴らし笑うと右手を振り下ろす仕草をした。蔡瑁の後の兵達は剣を抜刀して劉表の兵達に遅いかかる。
「この場は私達に任せて張允様を連れて逃げろ!」
隊長は蔡瑁の兵達と交戦しながら、張允の側にいる兵に大声で命令した。兵は頷くと張允を連れ馬に向かっていくが、進行方向から騎乗した蔡瑁の兵達が五騎姿を現しその兵を槍で刺殺した。張允は咄嗟の出来事に腰を抜かし体勢を崩すと尻餅をついた。
「無様だな」
蔡瑁は張允の元にゆっくりと近づいてくると張允に見下すような視線を向けた。
「叔母上」
張允は腰を地面につけたまま、蔡瑁の顔を見ると視線を周囲に向けた。そこには蔡瑁の伏兵により既に絶命した劉表の兵達の躯が転がっていた。張允は自分を守る者達がいないことを悟り、体を震わせながら蔡瑁に視線を戻した。
「叔母上、私を宜城にお返しください」
「駄目だと言ったはずだ」
蔡瑁は感情の篭もらない瞳で張允を凝視した。
「何故です? 私が襄陽にいようと役には立たないではありませんか?」
「お前を生かして義姉上の元に返すのも厄介でな」
蔡瑁はそう言い張允の前で剣を地面に突き立てた。
「お前には失望したぞ。この場で自決するか、劉正礼に例の文を届けるかどちらか好きな方を選べ」
蔡瑁は感情の篭もらない声で淡々と言った。張允は涙目で蔡瑁を見ていた。
「叔母上、何故私が自決しなければならないのですか?」
「お前は大した情報は知らないが、この襄陽に長く居すぎた。それだけで私がお前を殺す理由は十分だ」
「いやです。自決も劉車騎将軍の元に行くのもどちらも選びたくありません!」
張允は涙を流しながら蔡瑁にすがりつき訴えた。蔡瑁は彼女の兵達に目配せした。すると張允を両肩を抑えるようにして二人の兵が押さえつけた。張允は殺されると思ったのか暴れた。だが、二人の兵に押さえつけられ身動き出来ずにいた。
「叔母上、お許し下さい!
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