第153話 蔡瑁反乱画策
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瑁の行動は早かった。彼女が保有する涼州産の駿馬十六頭を自分と部下に割り当て、襄陽を速やかに立った。彼女達が向かう先は宜城の方角だった。
蔡瑁達は日が完全に沈んだ後も進みを止めず、月明かりだけを頼りに張允と劉表の兵達を追っていた。これは彼女達に土地勘があるからできたことだろう。
その後も蔡瑁達は一度も休みを取ることなく張允達を追い続けたが急に馬の速度を落とした。彼女に付き従う兵達も彼女に倣い馬の速度を落とす。
「皆の者、このまま馬を走らせれば今夜中に秋佳に追いつける。義姉上の兵達は秋佳がいるため無理をせず、この先で夜営をしているはずだ。我らは兵達を皆殺しにし秋佳を誘拐する。いいな」
馬上から蔡瑁は兵達に自分の考えを伝えた。その内容に兵達は驚いている様子はなかった。この場に付き従う兵達は彼女の子飼いの兵士達だからである。彼らは彼女に馬上より拱手して返事した。それを確認すると彼女は馬の走る速度を上げ、張允達を追うべく先を急いだ。
蔡瑁が兵士達に腹の中を告げてから四刻(一時間)が経過した頃、蔡瑁達は百里先に炎の明かりを確認した。蔡瑁はその明かりを確認すると更に馬の速度を上げた。
蔡瑁は明かりの元となる場所の近くまで到着すると馬の速度を落とし、後ろから追いかけてくる兵達に目配せをした。それに従い四名のみが彼女に従い、残りの兵達は進路を変えて去っていった。
「このまま襲撃するぞ、残りの兵達は手筈通り上手くやるだろう」
蔡瑁は兵達に口角を上げ笑みを浮かべた。そして、彼女はしばし炎の明かりを凝視した後、馬を走らせた。その後を追うように兵達が付いていく。
蔡瑁が明かりのある場所に到着すると、劉表の兵達が夜営していた。見張り番の兵は蔡瑁達を確認すると、慌てて仮眠する兵を起こそうとするが蔡瑁に斬り殺された。斬り殺された見張り番の叫び声に劉表の兵達は何事かと目を覚まし各々の武器を手に取った。蔡瑁は視線を見渡し、張允の姿を確認すると悪鬼の如き底冷えする笑みを浮かべた。張允は寝ぼけ眼で体を起こし蔡瑁を見つめていたが、その人物が蔡瑁と分かると表情を青くして、慌てて劉表の兵達の後ろに隠れた。
「蔡徳珪様、どういうおつもりですか!?」
劉表の兵達の隊長格らしき壮年の男が蔡瑁に対して抗議した。隊長は蔡瑁のことを警戒しながら周囲の様子を伺っていた。
「お前らこそ私の許しなく勝手に秋佳を連れて行くとはどういう了見だ?」
蔡瑁は不気味な笑みを浮かべながら隊長を凝視した。隊長は蔡瑁の放つ雰囲気に緊張していた。その緊張は他の劉表の兵達にも伝染した。
「劉荊州牧の御下命です。蔡徳珪様のお許しを得る必要はないかと存じます」
隊長は蔡瑁に一瞬怯むも懐から絹布に書かれた命令書を蔡瑁に見えるように見せ
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