第153話 蔡瑁反乱画策
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にあったからだ。
だが蔡瑁は知らないことがあった。蔡瑁討伐の勅が朝廷より出ていることである。また、正宗は長期戦は望むところであるからだ。正宗は蔡瑁討伐を大義名分にして荊州支配の足がかりにしようと考えているため、蔡瑁が抵抗すればするほど荊州中に軍を展開して合法的に豪族を押さえつけることが可能になるのだった。
張允は賭けにも近い蔡瑁の策に戦慄していた。
「秋佳、そんなに襄陽から離れたいか?」
張允の引きつった表情を見た蔡瑁は薄い笑みを浮かべた。張允は悪寒を感じたのか顔を青くした。
「帰ってもいいのですか?」
「襄陽から出してやる」
張允は蔡瑁の言葉に違和感を覚えているようだった。
「?」
「襄陽から出してやると言っているのだ。これを私の部下と一緒に劉正礼へ届けてこい」
蔡瑁は張允に布で巻かれた竹巻を投げ捨てた。張允はおずおずと竹巻に手を伸ばし拾い上げた。
「読んでもいいでしょうか?」
「好きにするがいい」
蔡瑁は興味を失ったように書類に視線を落とした。蔡瑁から許しを得た張允は布を解き竹巻を開き読み出した。張允は徐々に手を震わせていた。
「これを私に届けろと仰るのでしょうか?」
張允は口を震わせていた。
「そうだ」
蔡瑁は書類の竹巻に筆を走らせながら張允に告げた。
「こんなものを劉車騎将軍に届ければ、私は劉車騎将軍に八つ裂きにされます」
張允は体と口を震わせ蔡瑁に訴えた。蔡瑁は張允の訴えなど興味が無さそうだった。
「お前は襄陽から出て行きたいのであろう? だから役目を与えると言っている」
「私は劉伯母上の元に帰りたいだけです」
「役目を放棄するなら襄陽からは出せんな。大人しく部屋にでも篭っていろ。この戦が済めば帰してやる」
蔡瑁は筆を止め顔を上げると淡々と張允に言った。
「この文を劉車騎将軍に届ければいいのですね?」
「私の部下と一緒にな。無事に届けることができれば好きにして構わない」
張允は顔を青くし悩んでいた。蔡瑁は張允の心中などお構いなしに書類仕事を再開しはじめた。蔡瑁の口振りから張允が生きて帰る可能性は低いことが窺えた。張允が正宗に対して妙な真似をすれば、一緒に出向く蔡瑁の部下は張允を殺す算段なのかもしれない。
「伯母上、少し考えさせてもらってもいいでしょうか?」
「構わん。好きなだけ考えるのだな」
蔡瑁の口振りから張允が襄陽を出ることを諦めることを期待しているようにも感じられた。
執務室を後にする肩を落とした張允の後姿を蔡瑁は一瞬顔を上げて確認すると、また書類仕事に戻った。
「劉荊州牧から張允様を迎えにきたと兵達が参っていますがいかがしますか?」
蔡瑁の部下と思しき男が
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