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剣の丘に花は咲く 
第十五章 忘却の夢迷宮
第六話 それぞれの決意
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のフリゲート艦に乗り込んだジョゼフたちである。甲板に立つジョゼフの隣にはミョズニトニルンが控えており、その後ろには、魔除けの像としてよく見られる悪魔の形をしたガーゴイル型の魔法人形が立っていた。

「どうやら両用艦隊が到着したようです」
「ふむ。それでは早速試してみるとするか」

 空の向こう。
 米粒以下の大きさにしか見えない両用艦隊の姿を、どのような手段かはわからないが、ミョズニトニルンが主であるジョゼフに両用艦隊の到着を伝えると、ジョゼフは楽しげに笑い懐から赤い石を一つ取り出した。それはまるで炎を凝縮して出来たかのように紅く輝いているようにも見える石であった。
 それはエルフの手によって作り出した“火石”と呼ばれるものであり、今から地獄を造りだそうとするものであった。

「―――一体何をするつもりですか」

 それまで黙ってジョゼフたち主従の会話を聞いていたアンリエッタが、低い探るような声を上げた。
 ガーゴイルの背後には、後ろ手に縛られたアンリエッタとアニエスの主従の姿があった。

「なに、言ったであろう。“地獄を造る”のだと」
「……それを聞いて黙っていられるとお思いですか」
「いくら喚こうが叫ぼうがもう止められんよ。お前には見ているだけしかできない。ははっ、悔しいか? なあ、憎いか? 今から地獄を造り出そうとする男を止める事ができないのが、残念でならないか?」
「貴様―――ッ!!」

 呵々と笑いながら振り返り、アンリエッタを見下ろすジョゼフに、アニエスが激昂し飛びかかろうとするが、二人を監視しているガーゴイルの一体に取り押さえれてしまう。
 ジョゼフたちが乗るこのフリゲート艦には、実の所この場にいる者しか人間はいなかった。船を動かしているのは人間の水兵などではなくガーゴイルであった。数十体にも及ぶ数のガーゴイルが、どのような手を使ったのか、まるで何十年も船で過ごしてきたかのような熟練の水夫の動きで船を動かしていた。
 
「ええ、悔しいですし、憎いです」
「……気に入らんな」
「何がですか」

 感情を爆発させるアニエスとは違い、何処までも冷静な姿を見せるアンリエッタを、ジョゼフが戸惑う、というよりも不審な目つきで睨みつけた。

「何故そうも冷静でいる。もしやおれが言っているのことが全てハッタリだと思っているのか?」
「違います」
「では、何故そんな態度でいられるのだお前は?」

 静かな、しかし強い詰問の言葉に、アンリエッタは一度瞼を閉じると数秒後ゆっくりと瞳を開いた。

「そう、ですね……それは、多分わたくしが信じているからでしょう」
「……一体何を信じていると言うのだ?」
「彼を―――シロウさんを、わたくしは信じています」

 両手を縛られ、更に周囲にはガーゴイル。
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