第十五章 忘却の夢迷宮
第六話 それぞれの決意
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し、無限ではありません。今ここに両用艦隊が向かっています。王となったシャルロット女王陛下をお乗せし、王座に居座る強盗からリュティスを奪い返し、この真の国王を王座に座らせるために。この場で留まるのはあなた方の自由ですが、その時は賊軍の汚名を被る事を覚悟しておきなさい」
ブリミル教の頂点である教皇ヴィットーリオの言葉が、最後の一押しとなった。
まばらだった兵士や貴族の流れが、堰が崩れるように一気に増加した。ガリア軍のあちらこちらで議論の声が発生するが、一度傾いた流れは変える事は出来ない。中には杖を抜いてまで引きとめようとする者もいたが、どちらが優勢かは火を見るよりも明らかであった。
凛に詰め寄る事を忘れ怯えるように震えながら、その様子をルイズは見つめていた。
一体誰が、どのような手を使ったのかはわからない。
はっきりしているのは唯一つ。
誰がどうやってかは知らないが、何者かがタバサの変心を引き出したに違いない。
このままでは確実に、間違いなくガリア軍は全て義勇軍へと変わってしまうだろう。そして、全てはロマリア教皇の思い通りに事が運ぶのだ。
そうなれば、聖戦は止まらない。
女王陛下―――アンリエッタが止めようとした聖戦は一気に加速する。
これで―――。
「―――もう、誰にも止められない」
ぐっ、と噛み締めた口元から一筋の血が流れる。
そう、最早流れ出した勢いを止める術は誰の手にもない。
転がり始めた巨岩を受け止めることなど、誰にも出来はしないのだから。
どれだけの血が、涙が流れるか想像し、ルイズは血を吐く思いで呟かれた言葉は、
「大丈夫なんじゃない?」
「大丈夫です」
楽しげに笑う声と、穏やかな、優しげに聞こえる柔らかな声に受け止められた。
「え?」
はっと顔を上げたルイズを、二つの視線が迎え入れる。
一人は悪戯っぽく何かを含んだ笑みを。
一人は力付けるような笑みを。
ルイズに向け頷いて見せた。
「安心しなさい。あなたの友達は大した女よ」
「ど、どういうことよ」
「ルイズ。つまりタバサはあなたと同じということです」
「あ、アルトも―――もうっ! 一体なんだっていうのよっ!?」
む〜っ! と怒ってみせるルイズに背を向け、凛は南西の空から姿を現す大艦隊を物珍しげに見つめながら、ひらひらと背中越しに手を振ってみせた。
「つまるところ―――」
くるりと肩越しに振り返った凛は、怒っていたルイズも思わず見とれる程の、花が咲いたような魅力的な笑顔を向け断言した。
「―――恋する女は強いってことよ」
一国の運命の変動に揺れるカルカソンヌを、遥か彼方から眺める者達がいた。
小型
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