第十五章 忘却の夢迷宮
第六話 それぞれの決意
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至極当然の事です。ですから、どうぞこちらに来ていただき、その目で確かめられてください」
ヴィットーリオのその言葉に、戸惑いながらも幾人かの貴族たちが名乗りを上げた。彼らはかつてオルレアン公と縁がある貴族であり、幼い頃のタバサ―――シャルロットを知る者達であった。その中には以前士郎と中洲の決闘で戦った仮面を被った男の姿もあった。用意された小舟でロマリア軍の陣地まで連れられてきたガリアの貴族たちは、壇上に引き上げられ両軍の視線が集中する中、タバサと相対した。
壇上に上がった十人のガリア貴族たちは、ヴィットーリオを一瞥する事なくタバサへと近づくとその顔を真剣な様子でじっと見つめ始める。
一分か十分か、長い間タバサを見つめる中、貴族の中の一人が“ディテクト・マジック”を唱える。
次の瞬間、タバサを見つめるガリア貴族たちが一斉に膝をついた。
膝をついた一人のガリア貴族がタバサを仰ぎ見ながら、身体を震わせ喘ぐように声を上げた。
「お懐かしゅうございます―――シャルロット姫殿下ッ!!」
涙に濡れ歪んだ声は異様な程周囲に響き、一拍を置いてガリア軍から響めきが沸き上がった。
動揺と驚き、そして歓喜の声が上がる中、タバサの前で膝をついていた鉄仮面を被った男―――カステルモールは立ち上がると仮面を引き剥がし対岸のガリア軍へと振り返り叫んだ。
「故あって傭兵に身をやつしていたが、わたしは東薔薇騎士団団長バッソ・カステルモールであるっ!! ここにおわすのは間違いなくシャルロットさまご本人。ならば我らがすべき事は唯一つ。あの狂王を王座から引きずり下ろす事であるっ! そのための義勇軍をここに結成するっ! さあっ、我こそはと声を上げる者はここに―――シャルロットさまの下へと集えっ!」
天へと拳を突き上げ叫ぶカステルモールに、ガリア軍は揺れた。
目まぐるしく展開する事態に、ガリア軍の殆どがついていけないでいた。元から戦いの大義がないも同然のガリア軍であったが、それでも容易に立場を変える事など出来る筈がない。しかし、流れは確実に変わっていた。既にガリア軍からロマリア軍―――タバサの下へと駆け出す者の姿があった。
それを後押しするかのように、ヴィットーリオの声が揺れるガリア軍に響く。
「さあ、忠義に厚く、勇敢なるガリア軍の諸君。選択の時は今である。きみたちが選ぶのはどちらの王か? この旧き由緒ある王国に相応しき王はどちららが相応しいか選ぶのです。実の弟を殺し王座を奪い、堕落に耽る無能王か? それともここにおられる、このわたし―――聖エイジス三十二聖自らが戴冠の儀を執り行う美しく未来ある若き女王か?」
ヴィットーリオは両手を広げ、対岸で未だ惑うガリア軍に語りかける。
「よく考え、選びたまえ。時間はまだあります。しか
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