第十五章 忘却の夢迷宮
第六話 それぞれの決意
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ルケの頭を乱暴に撫でながら、凛は教皇が何者かを迎え入れようとする壇の上を指差す。
凛が向ける指の先へとルイズたちの視線が向けられる中、教皇が差し伸ばした手の先から小さな影が姿を現した。
「……っ、やっぱり」
周囲から響くざわめきが一層大きくなる中、ヴィットーリオの自信に満ちた声が響き渡る。
「あなた方が忠誠を捧げる男は、真に忠誠を捧げるべき人物ではありません。何故ならば、かつて時期王と目されたオルレアン公を虐し、王座を奪いとった男なのですから。しかし、そんな事は皆さんも分かっていることでしょう。それをわかっていながら、忠誠を捧げなければならなかった事をわたしたちは理解しています。そんなあなた方に、わたし達は救いを与える事が出来ます」
「ロマリアに降れって言うつもりかッ!!」
「今度はお前たちが王の座を奪おうというつもりだろッ!!」
対岸から向けられる怒声に、ヴィットーリオの浮かべた笑みは一ミリも崩れなかった。
向けられる怒声に笑みを向けながら、ヴィットーリオは壇の下から向かい入れた人物を前へと連れ出した。
「あなた方の心配は無用です。何故ならば、わたし達はただあなた方に正統な王をご紹介するだけなのですから」
前へと進み出た人物へと手を向けながら、ヴィットーリオは宣言する。
「ご紹介しましょう。亡きオルレアン公が遺児―――シャルロット姫殿下です」
萎縮することなく堂々と壇上へと立つタバサは、いつも着ている魔法学院の制服ではなく、豪奢な王族が着る衣服を身に纏っていた。服だけでなく、トレードマークとも言える眼鏡を外した顔には薄く化粧が施され。無表情という仮面により隠されていたタバサの高貴さが露わとなり、誰もが見とれる美しき姫を造り上げていた。
「タバサ……」
壇上のタバサを見上げるキュルケの口から、力なくタバサの名前が溢れる。
不安気に揺れるキュルケの姿を痛ましげに見つめていたルイズは、拳を握り締めると皆と同じく壇上を見上げていた凛を怒鳴りつけた。
「何でタバサがあそこに立っているのよッ!!?」
「…………」
「ちょっとっ!!」
チラリと視線をよこしただけで何も答えない凛の態度にルイズが更に詰め寄る間にも、事態は進行する。
想定外にも程がある状況に混乱する中、ヴィットーリオが偽物を用意したのだと考えたガリア軍の一部の者が、中洲で抗議の声を上げていた。
それも仕方のないことだろう。
何年もの間死んだと言われていた人間が生きていると。それもこのタイミングで現れる等、誰であっても偽物を疑うだろう。何十、何百、いや、何千もの疑いの視線と言葉が向けられる中、しかしヴィットーリオは堂々たる態度で渦中の人物―――タバサを指し示すと言い放った。
「お疑いは
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