第十五章 忘却の夢迷宮
第六話 それぞれの決意
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を崩さない凛の様子に不満であると態度で大いに露わにしながらも、キュルケは素直に凛の指示に従い様子を見守っていると……。
「ほら、どうやら始まるみたいよ」
「え? 何が?」
「黙ってルイズ。……っもう、なんでこうも嫌な予感がするのよ」
三十分程続いた祈りが終わり、壇上の上で両手を広げるヴィットーリオの姿に何処からとなく湧き上がる苛立たちに声を荒げるキュルケ。皆の視線が壇上へと集まる中、その中心に立つヴィットーリオの声が響く。
「本日、わたくしは敬虔なるブリミル教徒の皆さんにお話があります」
ヴィットーリオの声は何らかの魔法が関わっているのか、ロマリア軍の後ろにいるルイズたちの耳にもはっきりとその声は聞こえていた。そしてそれは勿論向かいの岸に展開しているガリア軍にも、確実に届いているだろう。その証拠に、ヴィットーリオの視線は目の前のロマリア軍ではなく、川向こうのガリア軍へと視線を投げかけているのだから。
「今から話をするものは、是非とも狂王に従うガリア軍の皆さんに聞いていただきたい」
「説教でもはじめるともりかっ?! 間に合っているぞっ!!」
「神への祈りなんて聞き飽きてんだよっ!」
対岸から向けられる野次に対し、にっこりと笑ってみせたヴィットーリオは、ますます笑みを深くして川向こうにいるガリア軍へと微笑み掛けた。
「そう、狂った王に従うしか他のないあなた方にこそ、です」
ヴィットーリオの言葉に、対岸にいるガリア軍から戸惑いの声にからくる響めきが起きる。
「何故ならば、あなたがたが王と仰ぐ人物は、正統なるガリアの王ではないのですから」
「「「―――ッ!!?」」」
声にならない悲鳴が、ルイズたちの口から上がった。
反射的に駆け出そうとするキュルケの腕を、何時の間にか伸ばした凛の手が掴んだ。
「ッ―――離してっ!」
「どうせ間に合わないわよ。それに、例え間に合ったとしても、あなたにはあの子を止める事はできないわ」
「何であなたにそんな事がわかるのよ!」
引き止められたキュルケが、険しい顔で凛に噛み付く。しかし、今にも殴りかかってきそうなほど激高するキュルケに対し、凛は微笑ましいものを見るかのように軽い笑みを向けるだけであった。
「わかるわよ」
「―――何をッ!!?」
一番の親友であるタバサの事をさも当然とばかりにわかっていると口にする凛を睨みつけたキュルケ。しかし、自分を見つめる凛の瞳に宿る真剣な光に気付き、限界まで高まっていた怒りがスッと抜けてしまう。
「落ち着きなさい。親友の一世一代の晴れ舞台をそんな顔で見るつもり」
「あなた……」
戸惑うように自分を見つめるキュルケの背中を、バンっと凛は強く叩いた。
よろめくキュ
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