第十五章 忘却の夢迷宮
第六話 それぞれの決意
[11/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
んな顔を見せてくれるのか?
その澄ました顔が、どのような形相になるのか?
死者が出ないようにと、戦争を止めるため奮闘してきたこの女が、一方的に消される兵士たちの命を思えば、一体どんな顔を見せるのか?
『信じる』、そんな言葉だけで全てを他人に任せた結果起きた惨劇を前にして、この女はどうなるのか?
そんな事を取り留めなく考えていたからか、知らぬ間にジョゼフの口は動いていた。
「……お前がいくらあの男を信じていたとしても、結局何も変わりはしない。これから起こる事を、誰にも止める事ができんのと同じようにな」
嘲笑する混じりのジョゼフの呼び掛けに、アンリエッタはカルカソンヌへと向けていた顔をジョゼフへと移す。
その顔は、何処までも穏やかであった。
「―――ッ」
瞬間、何故か―――言いようのない苛立ちをジョゼフは感じた。
焦るような、もどかしい鈍い気持ち。
それは何故か、かつて、何処かで感じた気がする。
言葉に出来ない苛立ちが頂点に達し、何も考えずに何かを口にしようとしたその時であった。
――――――ッッッ!!!!
まずは光だった。
目を潰さんばかりの莫大な光が甲板に立つジョゼフたちを覆い尽くした。
次に音。
光の後、一拍を置き爆音が轟いた。小型のフリゲート艦とはいえ軍艦がまるで津波に揉まれる小舟のように揺れた。
最後にきたのは熱波。
下手をすれば身体が焦げ付きかねない熱波が、甲板に転がるジョゼフたちの身体を舐めた。
「っぁ―――く、何が起きたぁッ!!?」
甲板を拳で殴りつけながら立ち上がったジョゼフが、顔を手で押さえながら大声を上げた。
ジョゼフが乱雑な手つきで目元を揉んでいると、霞んだ瞳は次第に像を結んでいく。
「……一体、何が起きた」
自然とこぼれ落ちる言葉。
ジョゼフの視線の先、巨大な炎の玉があった。
太陽の如く赤々と燃える炎。
ジョゼフは突如現れた炎の玉に驚いたのではない。
それが現れる事は知っていた。
驚いたのは、その炎の玉が出現した位置があまりにも近かったからだ。
予定では、カルカソンヌの南西から現れるガリア両用艦隊の中心で現れる筈であった。
それが、一体……。
信じられないものを見るように、地獄を造り出す筈だった炎の玉を見つめていたジョゼフは、視界を過ぎる炎ではない紅に気付いた。
「あれ、は?」
遥か天空に輝く星のような小さな赤い光は、段々とその輝きを大きく―――
「―――ッな?!」
みるみるうちに紅い光は鋭く尖り、極光となって甲板へと向かってきた。
そして、それはまるで意志があるかのように紅い光で出来た線を中空に描きながら甲板の上を翔
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ