第十五章 忘却の夢迷宮
第六話 それぞれの決意
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しかし、レイナールはそれに応えることなくじっとロマリア軍を見つめていた。
「ちょっと―――」
「教皇聖下だ」
反応しないレイナールにキュルケが文句を言おうと口を開いたが、それはレイナールの抑えた声により閉じる結果となった。
「教皇聖下?」
「え? 教皇聖下がどうしたの?」
「あそこに教皇聖下がいるってのか? 何だ、説法でも始めるのかな?」
口々に疑問の声が上がる中、いち早く窓から顔を引っ込めたルイズが未だ戸惑いの様子を見せるギーシュたちに声を掛けた。
「何かはわからないけど、間違いなく何か起きているわ。ほらっ! さっさと準備して行くわよっ!!」
手早く着替えを済ませたルイズがマントを翻しながらドアへと向かう中、隣室から悲鳴やら怒声が響き始めた。
「うっそ……やめてよね。化粧する時間ないじゃない」
「え、えっとお洋服は……っきゃ、は、早くしないと……」
「ちょ、それぼくのだ―――って破れたッ!! どどど、ど、どうすんだよギムリッ!!」
「だ、大丈夫だ。ほ、ほら、そんなに破れて……あ、股間が……ま、いっか」
「ちょ、マリコルヌ早く着替えろって。あ〜ッ!! いいか、脱がすぞ、しっかり踏んばれっ!!」
「ぎ、ギーシュ待てって、い、痛たたたたた、ちょ、乱暴に―――あ、駄目だ、気持ちよく……」
部屋から飛び出したルイズは、廊下を走りながらある部屋へと向かっていた。それは、先程の騒ぎで姿を現していなかった者の部屋。あれだけの騒がしくしていたのに、窓から顔を出した者の中で姿が見えなかった者が何人かいた。その中の一人の部屋へとルイズは向かっていた。目的の部屋はルイズに用意された部屋から二室しか離れていない。直ぐに目的の部屋の前へと辿り着いたルイズは、未だ続くドタバタと騒がしい他の部屋から聞こえる音を背中に、勢い良く扉を開いた。
「―――シロウッ!! 何してるのよっ。ロマリア軍、が……え? ―――いな、い?」
勢い良く開いた先に部屋の主―――士郎の姿はなかった。
ドアの取っ手を持ったまま立ち尽くしていたルイズは、不意に不安が湧き上がりぶるりと一つ身震いした。
「っ、何よ……本当に、何が起きてるっていうのよ……」
「っ、は、ぅ……ったく、本当に……何だってい、うのよ」
カルカソンヌの街から草原へと至る階段を駆け下りたルイズたちは、衰えるどころかますます大きくなるロマリア軍の歓声を前に立ち尽くした。息を切らしながらも状況を確かめようと周囲を見渡していると、壇上に掲げられた聖具を黒字に白く染め抜いた聖戦旗の隣に翻る別の旗に気付いた。
「あれって、まさかガリア王の旗?」
「そうね。間違いないわ……でも、どういうこと? なんでガリアの旗
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