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剣の丘に花は咲く 
第十五章 忘却の夢迷宮
第六話 それぞれの決意
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 ―――ッワアアアアアァァァァァァァァっ!!


「っ、な―――何事っ?!」 

 その日、ルイズたちトリステイン一行の目覚ましとなったものは、可愛らしい鳥の鳴き声などではなく爆発のように湧き上がった歓声であった。
 窓際のベッドで寝ていたルイズは、突然耳に飛び込んできた歓声に飛び起き、慌ててビリビリと震える窓を開けた。
 すると、開放された窓から倍以上に膨れ上がった歓声が飛び込んできた。何千、何万もの人間が声の限り上げる叫びが合わさり、物理的な力をもってルイズの全身を叩く。

「ちょ、な、え? な、何がおきたって言うのよ?」
 
 一瞬にして意識を覚醒させたルイズは、寝起きで霞む目を擦りながら窓の外へと視線を向けた。
 ルイズたちが泊まっている宿は、リネン川を一望できる崖の上に出来ている。そして崖側にある部屋にルイズは泊まっていた。窓から顔を出したルイズの視界に飛び込んできたのは、草原に展開したロマリア軍が歓声を上げている様子であった。
 
「おいおい、何があったってんだよ?」

 隣りから聞こえてきた戸惑った声に視線を横に向けると、自分と同じく窓から顔を出しているマリコルヌたちの姿があった。ルイズが何気なくぐるり首を回すと、ギーシュたちだけでなく、寝起きのままの姿で窓から顔を出すティファニアやキュルケたちの姿もあった。

「なに? まさか本格的な戦闘が始まったわけじゃないわよね」
「……あ〜、どうやら違うようだよ」

 “遠見”の魔法を使っていたレイナールが、ズレた眼鏡を整えながらキュルケの問いに応える。

「何か見えたのか?」
「ああ、ほら、あそこ見えるだろ。ロマリア軍の真ん中にある祭壇? みたいなやつ」

 レイナールの横から顔を出したギムリの問いかけに、レイナールは腕を伸ばしてロマリア軍の中心を指差した。皆の視線が一斉にそちらへと向けられる。確かにレイナールの言う通り、ロマリア軍の中心には、ぽっかりと穴が空いているかのように開けている場所があった。そしてその中心には、大きな櫓が、祭壇のようにも見える何かの姿があった。

「……まさか演劇でもやるつもりなのか?」
「流石にそれはない。いくら何でも杖や銃を突きつけ合っているこの状態でそんな事はしないだろ」

 ギムリが寝起きで油の浮いた頬を撫でながらポツリと呟くと、隣の部屋の窓からマリコルヌと並んで顔を出していたギーシュが首を振った。

「じゃあ、何だっていうのよ?」
「―――待ってくれ」

 寝癖を手櫛で整えながらキュルケが苛立った声で誰に言うでもなく文句を口にすると、“遠見”の魔法でロマリア軍を見つめていたレイナールから鋭い声が上がった。

「何よ?」
「どうかしたのか?」

 口々に周りから疑問の声が上がる。
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