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逆さの砂時計
ベゼドラ
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に合わせて弾む。

 首筋に薄い唇が這う。
 粟立ち震える体内を容赦なく掻き回すものが、徐々に質量を増していく。
 ロザリアの本能は焦燥を訴えるが。
 体は己の意志を拾ってくれないまま、一方的に揺すられ続け。

「い や ッッ やだ、やだ……いやだぁあああっっ!」

 小刻みな律動の後、熱を持った何かが胎内にじわりと拡がった。
 操り糸を切られた人形が、歯を鳴らしながら絨毯の上に転がり落ちる。
 二人の体が離れた拍子に、繋がっていた場所から つぅ……と。
 泡立つ白っぽいものが、糸を引くように零れ落ちた。

「……ウェー、リ……」

 見開いた薄い緑色の目は光を失い、透明な雫を溢すばかり。
 だというのに、まだその名前を口にするのかと、神父は苛立った。
 ぐったりと伏せているロザリアを仰向けにして、その腹部に跨がり。
 細く頼りない首を、両手できつく絞め上げる。

「……く……、あ……」
「これで……俺は自由だ……っ!」

 ロザリアの顔が苦痛で歪む。
 空気を求めて唇を開き。

「……く、ろす……ツェ る……」
「……!!」

 動けない筈の、ロザリアの右手が動いた。
 自分の首を絞めている手を引き剥がそうとするでもなく。
 神父の心臓がある辺りに、指を開いて。
 何かを問いかけているような、悲しい目で。

 『翳している』

「………………ッ!!」

 その意味に気付いた神父はロザリアから飛び退き。
 苦しげな表情で頭を抱えた。
 首を押さえて咳き込むロザリアの姿に涙を流したのは。
 紛れもなく、クロスツェルの意思だった。

「……うるさい……うるさいうるさいうるさい!! 黙れクロスツェルッ! お前との契約は果たした! 殺させろ! アイツは……俺は!!」

 ぱたりと手を落としたロザリアの姿に、涙が止まらない。
 寒気が走る。
 胸が痛い。
 クロスツェルの声が、ロザリアの名前をくり返し叫ぶ。
 必死さを隠そうともせずに、まるで悲鳴のように叫んでいる。
 その絶叫が、その切実さが、その痛みが。
 ベゼドラの意識を侵食する。

「黙れぇぇ!!」

 ロザリア。ロザリア、ロザリア、ロザリアロザリアロザリアロザリアロザリアロザリアロザリアロザリアロザリアロザリアロザリアロザリアロザリアロザリアロザリアロザリアロザリアロザリアロザリアロザリアロザリア。
 愛してる。愛してる。愛してる。
 どうか、どうか。

 ………………死なないで。


「……っ、ロザ リ ア」

 気絶している少女の体を抱き起こした神父が、濡れた頬を胸に引き寄せ。
 薄く開いた唇に、柔らかく触れるだけの口付けを落とした。

「ロザリア……」

 その金色
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