参ノ巻
抹の恋?
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「・・・」
立っていたのはこの寺の坊主である惟伎高だった。惟伎高は、一つ布団に包まっているあたしたちを見ると一瞬だけ動きを止め、それから無言でずかずかと歩いてきて、突如あたしの頭に拳骨を落とした!
「い!ッ・・・」
「おまえはァ、あれだけ言ったのにまァだわからねぇのか!」
「痛いじゃないのよ!このアホ!ッアホ!なっにすんのよぉ!」
あたしは横になったまま惟伎高の足をげしげしと蹴った。
「ピィ、出ろ。おい抹、起きィろ」
「あっなんで起こすのよ、かわいそうに」
ぱちりと目を覚ました抹は、自分の枕元に仁王と立っている惟伎高を見てまず不思議そうな顔をした。惟伎高が無言で隣を見ろと顎をしゃくり、それに従って素直に視線を動かした抹は、超至近距離にいるあたしとバッチリ目が合って、その瞬間盛大な悲鳴を上げた。
「ひっいいいいいいいいい!」
ちょっと。化け物にでも遭遇したような反応やめてくれるかな。
抹は驚くほどの早さで部屋の隅に逃げ込むと、体を丸めてぶるぶると震える。
・・・そこまで過剰に反応されると、まるであたしがいじめてるみたいじゃないのよ、もう。
「こォの、アホ娘。なんでこんな状況になったか言ってみろ」
「えー簡潔に言うとォ〜・・・めんどくさかったから?」
「ピイイィ〜・・・」
「いひゃい、いひゃいっての!」
惟伎高はあたしの片頬をつねると引っ張った。あたしはいらっとして、腕にかみついてやろうと口を開けたが、同時に惟伎高が壮絶な笑顔を浮かべるのを見てかきんと固まった。
「お、学んだな。偉いぞ」
惟伎高はすぐにその笑顔をしまい込み、「よしよし」とでもするようにあたしの頭をわしゃわしゃと撫でる。
その手をぺっと振り払って、あたしはつんと横を向いた。
「あたしが抹と一緒に寝るのが気に食わないのなら、もういっこ寝具持ってきて。あたし今日はゼッタイここで寝るから。抹と女子会するから。あんたは出て行って」
あたしのその言葉を聞いて抹の震えが大地震並に激しくなった。
反対するかと思われた惟伎高は、スッゴいイイ笑顔でわかったと頷くと部屋を出て行った。あれはなんか企んでるなー・・・と思ったけど案の定だった。惟伎高が持ってきた衾は二つ、あったのだ。
「ちょっと!個数おかしくない?」
「おかしくないぞ?元々ここにあるのが抹の分、それでこれがおまえの分で、こっちが俺の分だ」
「話聞いてた?女、
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