参ノ巻
抹の恋?
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いわよ」
あたしは指にカピカピの紅を押しつけると、慎重に抹の唇に伸ばす。
「・・・うーん、これ、ダメね。いつのやつかわかんないけど、完全に固まっちゃってるわ。水で伸ばせるかしら・・・って、あんたもなに固まってるの」
あたしはぺし、と軽く抹の額を叩いた。すると抹は、はっと我に返り、しくしくと泣き出したのである。
「え、ちょっと何、どうしたのよ。今の痛かった?」
「・・・触らないでください」
ガーン!まさか抹からそんなことを言われるとは思ってもみなかった。今度はあたしが衝撃も露わに固まった。
「あ、ま、間違いました!くく、くっ、くっく、く・・・」
「え、なに、笑ってるの?」
「違います!く、く、く、口に!ですね、さわ、さわ、さわ・・・」
抹は、今にも泡を吹いて倒れそうなぐらい真っ赤になっている。
ははーん。つまり口に触れるなと、そういうことらしい。あーよかった。ついに抹から全面的に嫌われたかと思って一瞬焦っちゃったじゃないの。
「あんたホント生きてけないわよ。意識しすぎ。女同士よ?別に口つけた訳じゃないし・・・」
「く、く、く、く、く、口つける!?」
今度こそ抹は限界を迎えたらしくふらりと倒れて気を失ってしまった。
なんなの、この純粋な生き物は。
あたしは抹の息呼吸が止まっていないかだけ確認すると、予め盥に用意していた水に手ぬぐいを浸し絞って、抹に施した化粧を落とし始めた。
実はもう日付が変わろうという時間なのだ。化粧は明日のための練習。でも抹は、化粧なしの方が儚げな雰囲気がより一層際だって良いかもしれない。ここまでやっといて結局素顔って怒られるかもしれないけど。
あーそれにしても疲れた・・・。あたしは肩をこきこきと鳴らすと、抹を褥に寝かせた。
あー・・・もういっかなぁ・・・あたしもここで寝ちゃおう。朝起きた抹が気絶するかもしれないけど、もう色々疲れたから、着替えるのも面倒くさいし、とりあえず寝よ・・・。
本当は明日のこととか、抹と一緒に作戦会議しようと思ってったんだけどな・・・でも当の本人は目を回して衾の中だし、こうなったら仕方ない。
あたしは抹の横にもぞもぞと潜り込んだ。抹は背が高いからか、大の大人二人だと女子とはいえ、ちょっと狭い・・・ま、気にしない。寝れなくもない・・・。
うとうとと眠りにつこうとした途端、ガラリと襖が開いた。
「・・・」
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