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戦国異伝
第二百十八話 太宰府入りその六

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「このまま二陣、三陣、本陣に後詰とな」
「渡るまでの間」
「守るだけじゃ」
「それだけですな」
「それとじゃ」
 ここでだ、九鬼もだった。
 怪訝な顔になりだ、来島そしてこの時もいる鶴姫に対してこうしたことも言ったのだった。
「松永じゃな」
「ああ、あの」
「松永殿ですか」
「あ奴が若しおかしなことをすれば」
「その時はですな」
「あの方の乗られている船を」
「攻めてじゃ」
 そしてというのだ。
「沈めるぞ」
「そしてですな」
「海の藻屑とするのですな」
「壇ノ浦で沈めてじゃ」
 丁渡九鬼達が今いるのはその辺りだ、それでこの場の名を出したのだ。
「平家の後を追わせてやろうか」
「あ奴だけは」
 来島も松永については眉を顰めさせて言うのだった。
「信用出来ませぬな」
「怪しいにも程がある」
「はい、ですから」
「海の上であ奴がおかしな素振りを見せれば」
 少しでもだ、そうした時はというのだ。
「鮫の餌にしてやろうぞ」
「是非共」
「天下の奸賊を消しその憂いを消してやるわ」
「しかし。思えば」
 鶴姫は真面目な顔でだ、ここで九鬼に言った。
「それだけ剣呑な方がよく今まで」
「織田家におるというのじゃな」
「はい、考えてみますと」
「中々尻尾を出さぬのじゃ」
「これまでの間は」
「そうじゃ、全くな」
「一度としてですか」
 こう九鬼に問うのだった。
「上様と会われてから」
「そうじゃ」
「十数年の間」
「全くな」
 おかしな素振りは見せなかったというのだ、松永は。
「わしも何とか消そうと思っておるが」
「一度たりとも」
「見せておらぬ」
「隙もですか」
「隙を見せてもな」
「消すおつもりなのですね」
「これは誰もが同じじゃ」
 それこそ羽柴や慶次以外の織田家の者全てがだ、松永が少しでもおかしな素振りを見せるか隙を見せればなのだ。
 消すつもりだ、しかし彼は。
「全く見せぬ」
「それで、ですか」
「そういうことじゃ」
「それだけ頭がいいということですか」
「悪知恵が働くのじゃ」
 九鬼は鶴姫にこう返した。
「あ奴はな」
「だからこそ油断出来ず」
「わし等にも隙を見せぬ」
「厄介な方ですね」
「宇喜多殿はな」
 松永と同じく悪人とされる彼はというと。
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