第二百十八話 太宰府入りその四
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「島津につくことはなく」
「それでじゃ」
「島津の水軍はいませんね」
「うむ、しかしな」
「用心に越したことはなく」
「しかもじゃ」
九鬼は海を船で渡る武田、上杉の軍勢を鉄甲船の上から見守りつつそのうえで鶴姫に対して語ったのである。
「こうして織田の水軍をな」
「天下に見せることもですね」
「上様のお考えじゃ」
信長の、というのだ。
「対馬の宗氏等にもな」
「対馬ですな」
「あの島もまた本朝にあるからには」
「組み入れるべきですね」
「天下にな」
信長は対馬のことも頭の中に入れている、それでなのだ。
「だからじゃ」
「この水軍の威容を天下に見せて」
「対馬、そしてまだ織田家についておらぬ海賊衆もな」
「織田家にですね」
「つかせるのじゃ」
「天下の全てを織田家に従わせるのですね」
「そうじゃ、上様はそこまで考えておられるのじゃ」
九鬼は確かな声で語った。
「あの方はな」
「戦わずしてですね」
「勝つ、それがな」
「上様の本来のお考えですね」
「戦になってもな」
それでもとも言う九鬼だった。
「如何に大軍といえど」
「常に勝つとは限りませんね」
「そうじゃ」
九鬼もこのことを言うのだった。
「一体何があるかわからぬのも戦じゃ」
「何が起こるかも」
「負けることもある」
例えこちらがどれだけ優勢であってもというのだ。
「だからな、戦って勝つよりもな」
「戦わずに勝つ方がですね」
「よいのじゃ。戦えばそれだけ人も死ぬし銭もかかる」
「だから大軍を動かしても」
「戦わずに勝てばな」
それで、というのだ。
「よいからのう」
「そうしたお考えとは」
「上様は決して戦を好まれぬ」
これは実際mにそうだ、実は信長は戦は好まない。それよりも政に遥かに重きを置きそのことを考える者なのだ。
九鬼も長きに渡って信長に仕えそのことがわかっている、それで言うのだ。
「だからな」
「この度も」
「戦う相手は島津じゃが」
「島津と戦うと共に」
「まだ織田家に従わぬ者達をじゃ」
「降すのですね」
「これはそうした戦なのじゃ」
島津攻めだというのだ。
「だから我等もこうしてじゃ」
「大軍でいるのですね」
「ここまでの水軍はこれまでなかった」
「本朝においては」
「そうじゃ、水軍だけでもな」
それこそというのだ。
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