巻ノ六 根津甚八その二
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「凄いのう」
「これが岐阜です」
清海が幸村に笑って答えた。
「かつて織田家の本拠でありました」
「そうじゃったな、だからこそな」
「これだけ栄えております」
「左様か」
「やはりこうした場所は信濃には」
「諏訪でもここまでは栄えておらぬ」
大社のあるそこyりはというのだ。
「とてもな」
「左様でありますか」
「流石は織田家の拠点だっただけはあるな」
「はい、店も人も多く」
「そしてここに」
「我等が探しておる者がいますな」
「根津甚八がな」
まさにその彼がというのだ。
「いるな」
「ではすぐにですな」
「剣術の道場を探しますか」
「そうしますか」
「今すぐに」
「そうするぞ、ではな」
幸村は四人に応えてだった、すぐにだった。
四人にだ、こう言ったのだった。
「ではな」
「はい、それでは」
「これより」
「すぐに岐阜の中を探しましょう」
「一人一人で別れてな」
幸村は四人にこうも言った、そしてだった。
一人ずつ別れてだ、その根津甚八の道場を探すのだった。するとすぐにだった。
一人岐阜の店と店の中を歩く彼のところにだ、海野が戻って言って来た。
「道場ですが」
「見付けたか」
「はい」
「それがしもです」
「それがしもまた」
「拙僧もです」
穴山と由利、清海も戻って幸村に告げた。
「ここから東に少し行ったところにです」
「その根津甚八の道場があります」
「では今からそこに」
「行かれますな」
「よし、では行こう」
幸村は四人に答えた、そしてだった。
彼はここでだ、四人にこんなことを言った。
「根津甚八も気になるが」
「何か」
「何かありましたか」
「うむ、拙者の目の前の御仁じゃ」
見れば幸村の前にかなり古ぼけた黒い袴に灰色の上着を着てやはり古ぼけた草履の男がいた、髪は長く伸ばしており痩せた顔の目の眼光は鋭く薄い髭が生えている。
その男を見つつだ、幸村は言うのだった。
「道場の場所はおおよそ既に聞いていたが」
「流石は殿」
「そこはもう調べておられましたか」
「そして、ですか」
「そのうえで」
「根津甚八殿の道場に向かおうと思っていたが」
ここでだったのだ。
「目の前にあの御仁が出て来られたのじゃ」
「この御仁が根津甚八」
「まさかと思いますが」
「見たところ剣客ですな」
「左様ですな」
腰には二本差しがある、それを見ての言葉だ。
「痩せていますが身体は締まっている」
「そして足の動きを見ると」
「どうにも」
「相当な剣の腕ですな」
「しかも忍の述も備えている」
幸村はその剣客のそのことも見抜いた。
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