巻ノ六 根津甚八その一
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巻ノ六 根津甚八
人形は確かに木曽に向かっていた、だが。
服は芸人の袖が短く着物の前が少しはだけている感じで色彩も派手なもののままであったが一人ではなくなっていた。
周りに忍装束の者達がいる、その者達が彼女に問うていた。
「では、ですな」
「真田幸村殿は」
「絡繰殿の人相見では」
「相当な方になられますね」
「なるねえ、あの御仁は」
艶やかな声でだ、からくりは忍達に答えた。
「文武両道、智勇兼備のね」
「そして家臣に豪傑を揃えた」
「そうした方になられますか」
「ああ、相当な方になられるよ」
人形は忍達を従えつつ山道を進んでいた、その速さは着ている服からは想像出来ないまでに速くてそのうえで。
右手には煙管があり口で吸っている、そうしつつ言うのだった。
「このこと半蔵様にお話しておかないとね」
「ですな、徳川様は信濃に進むおつもり」
「そこで真田家が敵になれば」
「その時は」
「味方になって欲しいね」
人形は煙管の煙草を吸いつつこうも言った、煙を口から吐く。
「是非」
「味方であればですか」
「我等にとっても非常に頼りになる」
「だからですな」
「幸村殿は」
「あっちもそう思うよ、ただ味方になるか敵になるか」
それがどうなるかはというと。
「あっちも見えなかったよ」
「ですか」
「絡繰殿でも」
「そこまでは」
「見えなかったよ、ただあの御仁の一生はね」
それはというと。
「ちょっと見えただけだけれど相当なものになるよ」
「相当な、ですか」
「そうしたものになりますか」
「ああ、戦国の世でも特に派手に戦って名を残す」
「そうした方になられますか」
「幸村殿は」
「まさに血戦を繰り広げる」
幸村の人生はというのだ。
「そんなものになるよ」
「ですか、どうも伊賀十二神将の方々が次々と幸村殿にお会いしていますが」
「絡繰殿もお会いされて」
「その様に仰るとは」
「これも縁でしょうか」
「そうだろうね、しかし本当に敵にしたくないね」
人形はこのことは切実に言った。
「敵にしたらそれこそね」
「我等伊賀にとってもですな」
「この上なく手強い敵となる」
「だからこそ」
「味方にしたいのですな」
「そのことも半蔵様にお話するよ」
忍達にこうも話した。
「是非ね」
「わかりました」
「それではですね」
「木曽を調べた後で」
「それからですね」
「伊賀に戻ろう」
こうしたことを話してだった、そのうえで。
人形はそのまま東に向かう、忍達もそれに同行する。彼等も彼等でそれぞれの道を進んでいっていたのだった。
幸村達は岐阜に着いた、そして岐阜の城下町を見てだった。
幸村は唸り
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