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支え
2部分:第二章
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。いいことがあるのよ」
「そうでしょうか」
 少なくとも舞鶴の多くの者はそうは思っていない。特に軍人達は。
「舞鶴ってのは都合の悪い時だけ雨が降るな」
 それが彼等の感想であった。舞鶴というのは雨が多いがそれは何故か重要な行事等の時に降るのである。そして降って欲しい時には降らないのだ。軍人達はそう言って舞鶴の雨を嫌っているのだ。
「それにな、雨になるとあれが出るんだ」
 彼等はここで忌まわしげに言葉を濁すのである。
「あれって?」 
 それをよく知らない者が尋ねる。すると彼等はある岸辺を指差すのだ。
「あそこにな」
「はい」
「雨の降る夜になると出て来るんだよ、あれが」
「そのあれって何なんですか?」
「これだよ」
 彼等はここでそう言って両手をだらんと垂らして幽霊の真似をする。
「これが出るんだよ」
「まさか」
「じゃあ行ってみな」
 それを否定すると彼等の態度は冷たい。
「手旗振ってる子供がいるからよ」
「感心な子供ですね」
「そう思うか?」
 軍人達にとっては感心な筈だ。夜中まで手旗を練習する子供なぞ本来は将来が頼もしいと思う筈だ。だが彼等はそれに対して表情を曇らせるのである。
「十年以上同じ子供なのにか?」
「えっ!?」
 それを聞いて殆どの者は顔を強張らせる。
「あの、それは」
「わかるだろ。雨の降る夜になると何故かよく出るんだ」
 彼等の顔がさらに暗くなる。
「だから嫌なんだよ、雨ってやつは」
「そうですか」
「ここのはな。ここの雨は特別だ」
 その子供は何時からいるか誰も知らない。気が着いた時にはもういたという。何者なのか誰も知らない。調べようとする者もいない。調べたら何があるかわからないからである。
 不気味なものも含む舞鶴の雨である。だがそれでも潤子はこの雨が好きだった。女中はそれについて尋ねたくなった。だがそれより前に潤子の方から声をかけてきた。
「知りたい?」
「は、はい」
 女中は戸惑いながらも答えた。
「私がここの雨を好きな理由はね」
「はい」
「雨が止むとね。何故かよく忠行様が来てくれるから。何故かわからないのだけれど」
「そうなのですか」
 忠行が晴れ男ということであろうか。
「いつもね、そうなの。どれだけ降っていても忠行様が来られる時は止むの」
「はあ」
「今でもそうよ。多分雨が止むとね」
「あら」
 ここで急に雨の音が止んだ。不思議なことに。
「止みましたね」
「来られるかも」
 潤子はそれを確認して微笑んだ。
「忠行様が」
「まさか」
「来ないと思うの?」
「それは」
 どうでしょうか、と言おうと思った。だがそれより先に本屋敷の方から声がした。
「お嬢様」
「忠行様よ」
 潤子はそれを聞いて微笑んだ。
「悪い
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